第792話 金は必ず輝く

「まあ!これが高倉さんの絵なの?なんて清新で俗世を超越しているのかしら。カーターさんがわざわざ彼女のために来たのも納得できるわ!」

「正直に言うと、伊藤さんの絵とこの絵では雲泥の差があるわ。まったく次元が違うもの。カーターさんが伊藤さんに興味を示さなかったのも当然ね!」

「伊藤仁美は高倉さんの絵を見ていなかったのでしょうね。展示室にこんなに優秀な女性画家がいることを知っていたら、カーターさんが自分を探しに来たと勘違いすることもなかったでしょうに。」

周りの人々の議論を聞きながら、伊藤仁美の顔は赤くなったり青ざめたりし、地面に穴があれば入りたいほどで、表情も次第に醜くなっていった。

我慢しなければ、人々の前で感情を爆発させるわけにはいかない。すぐに藤田炎がこの絵がおかしいことに気付くはず。あの率直な性格なら、きっと公衆の面前で高倉海鈴に問いただすに違いない。

そうすれば、みんな高倉海鈴の絵が冬島音の盗作だということを知り、今まで称賛していた天才画家が実は盗作者だということがわかる。そうなれば誰が高倉海鈴を支持するというの?

伊藤の奥様は拳を握りしめ、焦りながら藤田炎の方を見た。「藤田若旦那、あなたは幼い頃から油絵を学んでいらっしゃいますが、この絵をどうご覧になりますか?」

藤田炎はまだ絵に魅了されたままで、伊藤の奥様の言葉を聞いてようやく我に返った。この絵が高倉海鈴の作品だとは到底信じられなかった。こんな完璧な作品が二十そこそこの若い娘の手によるものだなんて。カーターさんが高倉海鈴に目をつけたのも無理はない。

ただし...この絵はどこか見覚えがあるような気がする。どこかで見たことがあるような...

「藤田若旦那?」伊藤の奥様が少し苛立たしげに促した。

藤田炎は思わず感嘆した。「高倉さんの絵は完璧です。私には評価する資格がありません。」

その後、彼は不思議そうに尋ねた。「ただ、高倉さんはなぜこんな素晴らしい絵を展示室の片隅に置いているのですか?このレベルの作品なら正面の展示スペースに置くべきでしょう。」

高倉海鈴は淡々と答えた。「金は必ず光るものです。片隅に置かれていても必ず見つけてもらえます。一方で、正面に置かれていても人々の目に留まらない絵もあるものです。」

この言葉に、人々は思わず伊藤仁美の方を見た。