第835話 18億の賠償

陸田家の年次総会が始まってわずか30分で、陸田進は頭を垂れて陸田家の幹部たちの追及を受けていた。一方、藤原徹はソファに座り、悠然とワインを味わいながら、終始表情を変えることはなかった。

陸田渚は藤原徹に18億円の賠償金を支払うと聞いて、すぐに怒り出した。

なぜだ?18億円だぞ、180万円じゃないんだ!それに陸田家は既に苦しい状況なのに、藤原徹はよくもこんな金額を要求できるものだ?

あの売女が産んだ私生児は死ぬべきだった!早くに始末しておけば、こんな面倒なことにはならなかったのに。

陸田渚は怒りを抑えきれず、罵り始めた。「藤原徹!この恩知らず!よくもこんな金を要求できるな?18億円だぞ!」

その言葉が終わるや否や、陸田の祖父は血相を変えて怒鳴った。「黙れ!」

陸田家の幹部たちも嫌悪の目で陸田渚を見た。この女は本当に愚かすぎる!

宴会場の雰囲気は極めて気まずくなった。しばらくの沈黙の後、ソファに座る男が静かに目を上げ、淡々とした笑みを浮かべた。「18億円の賠償?」

全員が息を呑み、体を震わせた。

藤原徹は無関心そうに言った。「本来なら、この提案を受け入れてもよかったのだが……」

だが?

全員の心臓が止まりそうになり、皆が焦りながら藤原徹の言葉を待った。ただ傍らの高倉海鈴だけは、のんびりとケーキを食べていた。

「しかし、陸田の次女が非常に不満そうだ。この金を受け取れば、私は恩知らずになってしまうのではないか?」

陸田渚は息を飲み、顔色が変わった。

藤原徹は笑みを浮かべながら言った。「どうせ私は18億円など必要としていない。こんな些細な金額で自分の評判を落とす必要もない。海鈴、そう思わないか?」

高倉海鈴は小鳥のようにこくこくと頷いた。「その通りです!徹さん、私たちは陸田家を訴えましょう!陸田の次女は陸田若旦那のことを全く気にかけていないようですね!18億円を払うくらいなら、彼を刑務所に入れたがっているみたいです!」

藤原徹は頷いた。「ああ」

陸田家の幹部たちは顔色を曇らせ、慌てて懇願した。「藤原社長、藤原社長……」

やっとの思いで藤原社長に示談金を受け取って事を収めるよう説得したのに、陸田渚の一言で藤原社長の怒りを買い、全てが台無しになってしまった。