第834話 平凡なのに自信過剰

「今や証拠は明白なのに、陸田さんはまだ改心する気配もない。陸田家がどんなに優秀な弁護士を雇っても、勝ち目は全くありません。とはいえ、陸田家は東京の名家ですから、あなた方の人脈を使って、陸田さんが更生すれば、数年で出所できるでしょう。ただ残念なことに、陸田さんは前科者になってしまい、後継者になれる可能性はもうないかもしれませんね」

この言葉に、陸田家の方々は顔を青ざめさせた。

「藤原徹!」陸田進は歯を食いしばった。

「どうしました?陸田若旦那、怒り出しましたか?」高倉海鈴は嘲笑を浮かべた。

この時、陸田進は高倉海鈴の口を塞ぎたい衝動に駆られた。なぜ自分がこの女性に好意を持ったのか、さらには高倉海鈴のために高倉家に対抗したのかさえ疑問に思えた。

彼は誠意を見せれば高倉海鈴の心を動かし、藤原徹から離れて自分と一緒になってくれると思っていた。高倉海鈴が離婚さえしてくれれば、過去のことは水に流して妻として迎えるつもりだった。しかし、それは全て自分の一方的な思い込みだった。この高倉海鈴は既に藤原徹に心を奪われ、頭の中は藤原徹のことばかり。自分が期待するのは無駄なことだった。