第834話 平凡なのに自信過剰

「今や証拠は明白なのに、陸田さんはまだ改心する気配もない。陸田家がどんなに優秀な弁護士を雇っても、勝ち目は全くありません。とはいえ、陸田家は東京の名家ですから、あなた方の人脈を使って、陸田さんが更生すれば、数年で出所できるでしょう。ただ残念なことに、陸田さんは前科者になってしまい、後継者になれる可能性はもうないかもしれませんね」

この言葉に、陸田家の方々は顔を青ざめさせた。

「藤原徹!」陸田進は歯を食いしばった。

「どうしました?陸田若旦那、怒り出しましたか?」高倉海鈴は嘲笑を浮かべた。

この時、陸田進は高倉海鈴の口を塞ぎたい衝動に駆られた。なぜ自分がこの女性に好意を持ったのか、さらには高倉海鈴のために高倉家に対抗したのかさえ疑問に思えた。

彼は誠意を見せれば高倉海鈴の心を動かし、藤原徹から離れて自分と一緒になってくれると思っていた。高倉海鈴が離婚さえしてくれれば、過去のことは水に流して妻として迎えるつもりだった。しかし、それは全て自分の一方的な思い込みだった。この高倉海鈴は既に藤原徹に心を奪われ、頭の中は藤原徹のことばかり。自分が期待するのは無駄なことだった。

陸田進は高倉海鈴が手ごわい相手だと知っていたが、こんなに毒舌だとは思わなかった。一言一句が相手の心を刺すような言葉ばかりだった。

しかし藤原奥様はまだ気が済まないようで、さらに攻撃を続けた。「陸田若旦那、鏡を見たことありますか?あなたのその偽善的な態度を見ていると吐き気がしますわ!」

「本当に理解できないわ。なぜ陸田家の方々はこんなに平凡なのに自信満々なのかしら!明らかにあなたが法を犯したのに、まだ徹に頭を下げろだなんて、何様のつもりですの?厚かましさだけが取り柄なの?」

「みなさん、そう思いませんか?」

高倉海鈴の言葉が終わるや否や、傍らの藤原明がすかさず続けた。「その通りです!罪を犯したなら、刑務所に入るか賠償金を払うかどちらかでしょう。でもあなた方は、お金も払いたくないし、刑務所にも入りたくない。それなのに兄を非道だと言う。陸田家の方々は本当に白を黒と言い張るのが上手いですね!」

陸田グループの幹部たちは複雑な表情で陸田進を見つめた。今や彼らも、この後継者が本当に彼らを導く能力があるのか疑い始めていた。