第833話 彼を刑務所へ送る

陸田家の方の表情を見て、傍らにいた高倉海鈴はすでに忍耐を失い、冷ややかに鼻を鳴らした。「陸田進は冬島志津に一度も会ったことがないし、冬島志津の許可も得ていない。だから彼は冬島志津を知らないはずです。藤原徹が自分の作品を無断使用されたことを発見したのだから、法的手段で自分の権利を守るのは当然じゃないですか?陸田家の方々の目には、陸田家の利益を損なう人は全て利己主義者に見えるのですか?本当に笑止千万です!」

「海鈴!」陸田の祖父は怒り心頭だった。

彼は体を震わせ、心に恐怖が押し寄せてきた。もしこの件が広まれば、ビジネス界全体が陸田家を軽蔑するだろう。すでに危機に瀕している陸田家は、間違いなく前例のない危機に直面することになる。

しかし、どうして藤原徹が冬島志津になれたのだろうか?彼は生まれた時から私生児として、周りの白い目に晒され、幼い頃からもみじ園に放置され、自力で生きていかなければならなかった。両親さえも彼を嫌っていたのに、毒で死にかけていた人間が、どうして油絵界のトップになれたのだろうか?

当時、彼らは藤原徹が六歳まで生きられないと確信していたから、山田莉央との子供の取り換えに同意し、陸田進を育てて後継者にしようと考えた。しかし、藤原徹が生き延びただけでなく、独力で藤原財閥を設立するとは思いもよらなかった。

今や藤原財閥はC国の主要産業となり、彼もビジネス界で名を轟かせている。それだけでなく、芸術界でも影響力を持ち、一言で多くの人を動かすことができる。

一方、陸田進は藤原家と陸田家の優れた資源を持ちながら、まだ原点に留まったままで、陸田グループを維持することさえ困難な状況だった。

陸田の祖父は胸が痛み、今になって後悔の念に駆られていた。もし当時、藤原徹を選んでいたら、結果は違っていただろうか?しかし今となっては後戻りはできない。藤原徹は陸田家の所業を全て知っており、もう陸田家のために働くことはないだろう。今は全ての希望を陸田進に託すしかなく、いつか彼が這い上がることを願うばかりだ。

当面の対策として、藤原徹と完全に敵対関係になることは避けなければならない。どうしても訴訟を取り下げてもらう必要がある。さもなければ、陸田グループは取り返しのつかない損失を被ることになる。

陸田の祖父は暫く沈黙した後、取り繕った笑顔を浮かべて、「徹……」