第810章 罠を仕掛ける

陸田進が追いかけようとした時、一人に遮られた。その人は眉をひそめて言った。「陸田若旦那、藤原奥様は個室に入られましたから、お入りになるのは失礼です。それに、藤原奥様も陸田家に対して何も言わないでいるのですから、これ以上彼女を困らせないでください」

彼は足を止め、高倉海鈴の後ろ姿を見つめ、目を細めた。高倉海鈴が有名なデザイナーの山内正だとは思いもよらなかった。おそらく今回も彼女は切り札となるパッケージデザインを披露するだろう。

今や藤原財閥は看板の香水調香師を失い、作られる香水はサリーのものには及ばないだろう。パッケージに力を入れるしかないが、どんなに美しい包装でも、香りが良くなければ意味がない。顧客はそれを買わないだろう。

一方、夏目小夜子は隅に隠れ、目に憎しみを宿していた。高倉海鈴には藤原徹という後ろ盾ができ、手が出しにくくなった。もし彼女が夏目家に戻ることになれば、さらに対抗するのが難しくなるだろう。