伊藤仁美は有頂天になり、思わず笑い声を漏らしそうになった。
高倉海鈴をあんな汚らわしい場所に売り飛ばせば、彼女には逃げ出す機会など絶対にない。もう二度と藤原奥様になる資格もなくなる。佐藤家のような名家は、一度も会ったことのない娘なんて気にも留めないはず。ましてや高倉海鈴が本当に佐藤家の人間かどうかも確かではないのだから、彼女のために人手と物資を無駄にして大々的に捜索する必要もない。
これからは、もう誰も彼女の邪魔をする者はいなくなる。
伊藤仁美は目に残忍な色を宿しながら、説得を始めた。「お父様、あなたが優しい方だということは分かっています。でも、優しさを向ける相手は選ばなければいけません。高倉海鈴のような陰険で残虐な女にあなたの優しさは勿体無いです。父さんはいつも孝行者でしたから、きっとおじい様の意向に逆らうことはないですよね?」