第865章 伝説の高倉海鈴が来た

「伊藤さんは気が優しいから、高倉海鈴のことを咎めようとせず、彼女の名誉を傷つけたくないだけです。他の人なら、こんな仕打ちを許せるはずがありません。伊藤さんがここまで我慢しているのに、高倉海鈴は反省もせず、今でも伊藤さんに謝罪していないのです！」

「伊藤さんは彼女を友達として扱っていたのに、彼女は嫉妬のあまり、伊藤さんの古琴を奪い取り、ネット上で非難の声が上がっている時も、家に引きこもって逃げ回っていました。しかも、私が思うに、彼女の本当の目的は古琴を奪うことではなく、伊藤さんの代わりに表彰台に立つことだったのです！」

ドーン——

会場が騒然となった。誰も真相がこのようなものだとは想像していなかった。伊藤さんの友人として、裏で策を弄するだけでも悪いのに、まさか表彰台に代わりに立とうとまで考えていたとは？

その言葉が落ちると、伊藤仁美は顔を覆って泣き出した。かすかなすすり泣きの声が聞く者の心を痛ませ、ライブ配信の視聴者たちも次々と慰めのコメントを送った。

【佳樹さんの泣き方が可哀想すぎる！失われた友情を悲しんでいるんだわ。これだけ長い付き合いの友達がこんな計算高い女だったと知って、誰だって受け入れられないでしょう！】

【高倉海鈴があんなに悪いことをしたのに、まだ彼女の名誉を守ろうとしている。高倉海鈴は有名デザイナーの山内正なのに、こんなスキャンダルが広まったら、誰が彼女のデザインした服を着るでしょうか？】

山田透は顔に軽蔑の色を浮かべ、「こんな時になっても、まだ古琴を伊藤さんに返そうとしない。こんな人間はデザイナーを務める資格なんてない！」

伊藤仁美はゆっくりと顔を上げた。その目は桃のように腫れ上がり、その場にいた人々は皆、深いため息をついた。

彼女は必死に感情を落ち着かせ、涙を拭いながら優しく微笑んだ。「彼女が来ようが来まいが、もうどうでもいいです。私も何も咎めたくありません。皆さんにも彼女を責めないでほしいです。どう言っても彼女は私の友達で、これだけ長い付き合いなのです。最後に名誉を失うような結末は望みません。」

その後、伊藤仁美は手を振って言った。「山田さん、授賞式を始めましょう。」