第864話 彼女は美人だが人格が悪い

二大トップハッカー組織が手を組み、ネットワークがある場所なら必ず手がかりを見つけ出し、売られた女性や子供たちを取り戻す希望があるはずだ。

忠司が答える前に、沙織はノートパソコンを取り出し、ダークウェブに告知を出して、全員にスターライトと共に行方不明者の調査に協力するよう要請した。国内トップクラスのハッカーたちが一斉に動き出し、全国に張り巡らされた大きな網のように、すぐにいくつかの手がかりを見つけ出した。

「お兄ちゃん、もし両親が私たちが人身売買の被害者を救っていることを知ったら、きっと喜ぶと思う。だって、彼らもこういった悪の勢力と戦って、命を落としたんだから」

「きっと喜ぶよ」忠司は静かに言った。

しばらくして、授賞式が正式に始まり、司会者が最初に挨拶をし、その後表彰が始まった。記者たちはみなステージに向けてカメラを向けたが、噂の古琴は見当たらなかった。

記者たちは急いで質問を始めた。「佳樹さん、ネットでは、あなたが気に入っていた古琴を友人に奪われたという噂がありますが、今回の授賞式で、あなたの欲しかった贈り物は手に入らなかったということでしょうか？」

伊藤仁美はためらいながら、目に悲しみの色を浮かべ、唇を噛んで、目を赤くしながら、悔しさと強さを混ぜた表情で答えた。「違います。皆さん誤解されています。私と海鈴は親友で、彼女はその琴が私の授賞式の贈り物だと知っていたのに、どうして奪うことがありますか？それに…」

彼女は目を赤くし、声も詰まりがちになった。「それにチャリティーイベントの責任者もその琴の意味を知っていて、勝手に売るはずがありません。これは全て噂で、皆さん信じないでください」

記者は更に質問を続けた。「でも、その古琴が会場にないようですが、佳樹さん、これについて説明していただけますか？」

伊藤仁美は目を伏せ、涙を目に溜めながら、慌てて説明した。「実は…昨日練習中に誤って古琴を傷つけてしまい、会場に持ってこられなくなってしまったんです。これは全て海鈴とは無関係です。皆さん、誤解しないでください」

この質問をした記者は伊藤家が事前に手配した人物で、伊藤家は彼に金を渡して伊藤仁美の演技に協力させていた。インタビューがここまで進むと、彼は意味深な口調で尋ねた。「佳樹さん、本当にそうなんですか？」