宴会場の外で、マイバッハが停車し、豪華な装いの男女が車から降りてきた。
高倉海鈴は耳に埋め込み式イヤホンを付け、いつでも鈴木薫と連絡が取れるようにしていた。首のネックレスにも針穴カメラが仕込まれており、映像を彼に送信できるようになっていた。
白川梢という名前で渡辺祐介に近づき、わざと別の場所で待っていたことで、渡辺祐介が自ら彼女をパーティーに迎えに来ることになり、渡辺祐介の隣にいる女性が藤原奥様だとは誰も疑うことはなかった。
藤原徹は遠くで車から降りる女性を見つめ、目を細めた。
渡辺祐介は高倉海鈴を宴会場に連れて入った。高倉海鈴は先ほど何が起きたのか知らなかったが、ただその男性を避けたいという一心で、不自然さを悟られないようにしていた。
記者たちは質問を続けた。「藤原社長、お相手の身分を明かしていただけませんか?」
藤原徹は微笑み、視線は群衆を通り抜け、最後に宴会場の入り口にいる女性に注がれた。
高倉海鈴:「??」何なの?
彼女は思わず自分の顔に触れた。変装しているはずなのに!しかも兄の変装術は天下一品で、自分でも違いが分からないはずなのに、藤原徹は気付いたの?
幸い、その視線はほんの一瞬で移り、冷たい声が響いた:「それはできません」
記者たちは一斉に失望の表情を見せたが、それでも十分満足していた。藤原社長が彼らの取材に応じたのは前代未聞のことで、これ以上は望めなかった。
彼らが次のターゲットを探している時、突然藤原徹が渡辺祐介の前に現れ、深い瞳で、声には冷たさを帯びながら言った。「こちらが玉璧ジュエリーの渡辺社長ですか?」
皆の視線が一斉にこちらに向けられ、高倉海鈴は心臓が一拍飛び、慌てて頭を下げた。
渡辺祐介は、あの有名な藤原社長が自分に話しかけてくるとは思ってもみなかった。彼は喜びを抑えきれず:「はい、私です!藤原社長が私をご存知だったとは!何かご用でしょうか?」
藤原徹は意味深な笑みを浮かべ、その後視線を彼の隣にいる高倉海鈴に向けた。「特別なことではありません。ただ、渡辺社長の同伴者が...とても美しいと思いまして」
渡辺祐介:「??」
一同:「!!」