翌日、渡道ホールにお客様が訪れた。西村秀次が聖都から駆けつけ、特別に帝王緑の翡翠の腕輪を持参し、高倉海鈴の手首に着けながら説明した。「これは西村家の嫡流が身につける翡翠の腕輪です。父と母も持っていて、父のものは兄に譲られ、叔母のこれはもちろんあなたに渡すべきものです」
西村秀次の兄とは西村秀太のことで、西村沙織の息子であり、西村家で三番目の若旦那である。彼が言う叔母とは夏目秋のことだ。
もしこれが母の形見なら、高倉海鈴には断る理由がなかった。彼女は翡翠の腕輪を丁寧に観察し、腕輪には特別な模様が刻まれているのに気付いた。
西村家の三兄妹の中で、叔父の西村沙織と母親だけが腕輪を持っていた。夏目彩美は持っていなかったようだ。もう一つの腕輪は西村秀太が所持しており、これは西村家が彼女と西村秀太を後継者候補としていることを意味していた。