第850章 9霄の古琴

彼女の心を見透かしたかのように、藤原徹はゆっくりと言った。「藤原奥様がお気に召すのなら、お金を使うのは何の問題もありません。私に最も不足していないのはお金ですから、奥様を喜ばせるためにお金を使うのは価値があります。」

高倉海鈴が口を開こうとした時、イヤホンから鈴木薫の声が聞こえ、彼女の表情が変わった。

藤原徹は何かを察知したかのように、ゆっくりと振り返り、「では失礼します。白川さんが何か必要な時は、3階に行って助けを求めてください。そこには私の部下がいますから、危険な目に遭わないようにしてください。」

高倉海鈴は身震いした。藤原徹は確かにすべてを知っていた。何も彼から隠せないのだ。

……

高倉海鈴は渡辺祐介の件を処理し終えると、霊峰閣の人々が現れて渡辺祐介を連れて行った。残りの処理は鈴木薫に任せ、彼女はもう関与しないことにした。

パーティーは既に1時間以上経過しており、高倉海鈴は顔の皮膚が息苦しく不快に感じていた。そこで休憩室に入って化粧を落とし、人がいないうちにこっそり離れようと考えた。

しかし休憩室を出てすぐ、見覚えのある人影とぶつかった。

藤原徹は安定した足取りで、高野司たちを従えて堂々と歩いてきて、ちょうど高倉海鈴と向かい合わせになった。彼女はまだ白川梢の礼服を着ていた。

高野司は驚いた表情で言った。「奥様、体調が悪いとおっしゃっていたのに、どうしてここに?その礼服は……」

「そうですね。出かける時、藤原奥様はお腹が痛いとおっしゃっていましたが、もう良くなりましたか?」藤原徹は目の前で慌てふためく女性を意味深な目で見つめた。

高倉海鈴は口角を引きつらせた。本当についていない。休憩室を出たばかりで、最も会いたくない人に出くわしてしまった。

藤原徹は彼女の困った様子を見て、高野司たちに手を振って下がるよう指示し、精巧な彫刻が施された紅木の箱を近くのソファに置かせた。男は彼女に手招きをして、「自分で選んだプレゼントを見に来てください。」と言った。

高倉海鈴は思わずソファの上の紅木の箱を見つめた。先ほど藤原徹と知恵比べをしていた時、あの高価な九霄古琴を競り落とすよう促したことを思い出した。