第920章 あなたたちに幸運を

高倉海鈴のDMとコメント欄には多くのネットユーザーからの罵倒が溢れ、常にトレンド入りしていた。そんな中、突然夏目家からの電話がかかってきた。

「海鈴、もう知っているでしょう。私と祖父は本当に故意じゃなかったの。あのような写真を記者に撮られるなんて思ってもみなかった。ごめんなさい...」電話の向こうで、夏目小夜子の声は後悔に満ちていた。

高倉海鈴は数秒沈黙した後、突然嘲笑うように言った。「故意じゃなかった？」

「海鈴、実はあの婚約は...」

高倉海鈴は冷たい声で夏目小夜子の言葉を遮った。「あの婚約は私の母と藤原家の奥様である陸田汐さんとの間で決められたものよ。母が夏目家の方だったから、そして貴女が夏目家のお嬢様だから、その婚約は当然貴女のものだと思っているの？」

夏目小夜子は高倉海鈴の言葉を聞いて、突然胸が締め付けられる思いがした。しかし、この婚約には婚約書がなく、誰のものかは確かめようがない。夏目家が婚約は自分のものだと言い張れば、高倉海鈴がどう説明しても誰も信じないだろう。疑いの種は人々の心に根付き、高倉海鈴はどこへ行っても後ろ指を指されることになるはずだ。

婚約は夏目秋と陸田汐の口頭での約束に過ぎず、実質的な証拠はない。しかも二人とも既に亡くなっている。夏目小夜子は全ての人が高倉海鈴を非難することは望んでいない。ただ疑いを持つ人がいれば十分なのだ。

夏目小夜子は得意げに笑みを浮かべながらも、悲しそうな声を装って言った。「海鈴、本当にごめんなさい。私はあなたの評判を傷つけたくなかったの。自分を抑えてきたわ。でも、明らかにあなたが間違ったことをしているのに、どうして少しも反省の気持ちがないの？」

高倉海鈴は冷たく答えた。「ふーん！」

「海鈴、藤原財閥がパーティーを開くって知ってる？上流社会のほとんどの人が招待状を受け取ったわ。夏目家も招待されたの。藤原社長が夏目家に招待状をくれたということは、夏目家をそれほど嫌っていないということよ。だから、あなたにも過去の誤解を解いて、私たちと仲良く付き合ってほしいの。」

高倉海鈴は画面上のメッセージを見た。藤原徹が夏目家をパーティーに招待したのは、彼らを許したからではなく、別の思惑があるからだ。