第961章 材料が差し替えられた

青山裕介は人々が自分の息子を褒めるのを聞いて、恥ずかしそうに頭を下げた。確かに青山博之は人と争うことは一度もなかったが、彼を怒らせた者は全て密かに処理されていた。彼は決して気が優しいわけではなく、ただ上手く装っているだけだった。

その時、青山博之は審査員席の隣の特別な席に座っていた。誰が挨拶しても、彼は微笑みを返し、手を振って応えていた。そのような姿にファンたちはますます彼のことを好きになっていった。

番組の収録がまもなく始まる。芸能人たちは、事前の抽選順序に従って自分の作品とデザインのインスピレーションを披露することになっていた。さすがに皆それなりの地位のある人たちなので、たとえ作品が良くなくても、審査員たちはあまり厳しく叱責することはないだろう。

田中清は焦りながら尋ねた。「海鈴はまだ来ないのかしら?」

この言葉に、周りの視線が二人に集まった。ファンたちは我慢できずに尋ねた。「おじさん、おばさんは青山博之のファンじゃないんですか?」

青山裕介はそこでようやく気づいた。青山博之が彼らに用意した席の周りは全て彼のファンで、彼の名前が書かれたボードを掲げ、青い応援ライトを光らせていた。

しかし、大勢の若者の中に40代の二人が混じっているのは、確かに気になるところだった。

田中清は首を振って答えた。「違うの。私たちの娘が緊急参加のデザイナーで、私たちは彼女を応援しに来たのよ。」

ファンたちはこの話を聞いて、目を輝かせた。「すごい!お嬢さんすごいですね!デザイナーの勉強って、お金かかりますよね!バラエティ番組に参加できるなんて、きっとすごく優秀なデザイナーなんでしょうね!」

「でも、青山博之のファンじゃないのに、なぜここに座っているんですか?ここの席は全部青山博之の後援会が押さえているはずですよ。」

人々がそわそわと話し合っているとき、数人の芸能人が登場し、皆の注目はステージに集まった。

青山博之は無表情で芸能人たちを見つめていた。突然、イヤホンから聞き覚えのある声が聞こえてきたが、彼は平然とした表情を崩さなかった。

高倉海鈴の声がゆっくりと伝わってきた。「お兄さん、私の必要な材料が不良品に替えられてしまったわ。」