第960章 デザイン画が盗まれる

高橋はにこにこと笑って言った。「高倉さん、頑張ってくださいね。私たちのテレビ局の番組は公平公正でなければなりません。あなたの実力なら、きっと優勝できるはずです」

高倉海鈴は、あのマネージャーの言葉を思い出し、思わず尋ねた。「公平公正ですか？つまり、私の実力さえあれば優勝できるということですか？結果は知名度とは関係ないのでしょうか？」

高橋は一瞬戸惑い、不思議そうに聞いた。「高倉さん、なぜそのようなことを？誰かに困らされているのですか？」

高倉海鈴は告げ口をするつもりはなかった。こんな小物たちなら自分で対処できる。彼女は微笑んで答えた。「いいえ、何となく聞いてみただけです」

電話を切った後、局長は何か違和感を覚え、すぐに部下に指示した。「バラエティー番組の収録現場に行って、誰が高倉さんを困らせているのか確認してきなさい」

この時、高倉海鈴はすでにデザインエリアに入り、番組の要求通りにデザイン画を描き終えていた。これから決められた時間内に、番組側が用意した材料を使って作品を作り上げ、最後に審査員が採点して、全員の作品を評価し、最終的な勝者を決めることになっていた。

デザイン画は描き終わり、高倉海鈴は図面を持って材料エリアに材料を選びに行った。ところが、ちょうど夏目茜のマネージャーと出くわしてしまった。

田村圭は高倉海鈴を高慢な目つきで一瞥し、彼女が手に持っている蓮の色の絹と煙雲紗を見た後、さらに高倉海鈴のデザイン画をちらりと見て、すぐに凍りついた。

この若いデザイナーがこんなに実力があるなんて？彼女はこの女性が気に入らなかったが、そのデザイン画があまりにも完璧すぎることは認めざるを得なかった。完成品はきっともっと素晴らしいものになるはずだ。

田村圭は他のデザイナーの実力が夏目茜を超えることは心配していなかった。確かに、上には上がいるものだ。しかし、デザイナーの実力が夏目茜を圧倒することは絶対に許せなかった。そうなれば、番組が放送された時に不必要なトラブルを招くことになる。

彼女は眉をひそめて少し考え込んだ後、目を輝かせた。夏目茜にこのデザイン画で競技に参加させれば、すべての問題が解決するはずだ。

高倉海鈴が材料を選び終わって離れようとした時、突然誰かに強く押されて、気づいた時には机の上に置いていたデザイン画が誰かに持ち去られていた。