第972話 5000万の投資が消えた

高倉海鈴は彼女に一瞥すら与えようとせず、無関心な様子で言った。「夏目さん、私が瑠璃の首席デザイナーだということはご存知でしょう。私のデザインは瑠璃に莫大な収入をもたらしています。このドレスには私自身それほど満足していませんが、それでも少なくとも5000万円の利益を瑠璃にもたらすことができます。このデザイン画を買い取りたいのなら、その損失を補償していただく必要があります。そうでなければ、なぜあなたに売る必要があるでしょうか？」

周囲の人々は一様に頷き、高倉海鈴の要求する金額が決して高くないと感じた。

陸田晋が前に出て、「その通りだ。山内正のどのデザインも瑠璃に巨大な利益をもたらすことができる。5000万円など大したことではない。夏目さん、買うなら金を出せばいい。買わないなら公に謝罪すればいい。あなたが選びなさい」と言った。

夏目茜は怒りで顔を真っ赤にした。選択なんてできるわけがない！5000万円で一枚の紙を買うなんて、そんな馬鹿なことはできない！まさかこのデザイナーがこんなに強欲だとは思わなかった。いきなり5000万円なんて、交渉の余地すら与えない。

「夏目さんは謝罪も支払いも拒否するようですね。それなら私も容赦しませんよ」青山博之は冷たい声で言い、その目には鋭い光が走った。

夏目茜は顔面蒼白になり、監督も困惑した表情で俯いていた。心の中では夏目茜と高倉海鈴の両方を罵っていた。この二人の女性は誰も譲らず、この番組はこれ以上録画を続けることができない。一方には青山家と陸田晋、もう一方には投資家がいる。誰も敵に回すことはできず、板挟みになっていた。

夏目茜は恐怖で体を震わせていたが、よく考えてみると、このデザイナーは青山家の実の娘ではない。一方、自分は夏目家の人間だ。青山家が無関係な人のために夏目家と敵対する必要があるだろうか？青山博之はただの脅しで、本当に自分に手を出すはずがない。

彼女は表情を和らげ、傲慢な口調で言った。「和解する気がないわけではありませんが、高倉さんに誠意が感じられません。いきなり5000万円なんて。もういいです、私はバラエティ番組を降板します」

そう言って、夏目茜と田村圭は立ち去ろうとした。