第976話 夏目茜を探る

電話がつながったものの、相手がなかなか出なかった。高倉海鈴は頷いて言った。「予想通りね。ネットで好き勝手なことを言う勇気はあるのに、私の電話には出られないなんて」

電話を切ると、高倉海鈴は立ち上がってコートを着た。藤原明は慌てて尋ねた。「どこへ行くんですか？」

高倉海鈴の瞳に危険な色が浮かんだ。「電話に出ないなら、直接会いに行くしかないわね。私の目の前でも同じことが言えるのか、見てみたいものだわ」

藤原明：「……」怖すぎる！怒った高倉海鈴は虎みたいだ！

高倉海鈴は車を運転して夏目茜のスタジオへ向かった。今頃スタジオの全員が彼女の名誉を守ろうと必死になっているはずだし、夏目茜があの投稿をしたのも全員の同意があってのことだろう。でも、どんなことをしても無駄なのに。

車を降りると、高倉海鈴は力強くドアをノックした。ドアは固く閉ざされ、まるで誰もいないかのようだった。でも彼女は中に隠れているのを知っていた。彼女はゆっくりとバッグから細い針金を取り出し、鍵穴で少し弄っただけで、カチッという音と共に開いた。

藤原明は驚いた表情で彼女を見つめた。義姉さんがこんな技術を持っているなんて。彼女に出来ないことなんてあるのだろうか？

その時、室内の人々は恐怖の表情で彼らを見つめていた。高倉海鈴は腕を組んで、にこやかに挨拶した。「みなさん、いらっしゃいましたね！それなのにどうして開けてくれなかったんですか？」

藤原明：「……」本当に感心する。他人の鍵を開けて見つかったのに、こんなに冷静でいられるなんて。

田村圭は夏目茜と対策を相談していたが、顔を上げると高倉海鈴と藤原明を見つけ、怒鳴った。「誰が入れと言った？」

高倉海鈴は笑みを浮かべながら言った。「実力で鍵を開けて入ってきましたよ！」

スタジオ内は静まり返り、田村圭は血を吐きそうになりながら、激怒して叫んだ。「ここはあなたを歓迎しません。出ていってください！」

高倉海鈴は彼女を完全に無視し、冷たい視線を夏目茜に向けながら、優しい口調で言った。「夏目さん、なぜコンテストを辞退したのか、本当のところはわかっているでしょう？ネットで適当なことを書き込んで、恥ずかしくないんですか？」

夏目茜は後ずさりしながら、「私は好きなことを書いただけよ。誰のことだとも言ってないでしょう。あなたに何の関係があるの！」