刺青 その二
理論は実践に負けた。
陳二狗は煙草を消すと、赤ワインを一口飲み、不安げな小夭を引き寄せ、彼女の不安と一抹の期待が入り交じった整った瓜実顔を見下ろした。その顔は、桃の花びらのように赤く艶やかだった。
陳二狗が頭を下げて小夭の唇を奪った時、彼女は目を閉じ、まるで運命に身を任せるかのように好き放題にされた。
息苦しく、唇がしびれた。
陳二狗はようやくこのような荒唐無稽な状況で初めてのキスを捧げた小夭から離れた。彼女は目を大きく見開き、まだ人を震えさせるほど純粋だったが、一瞬にして気づける妖艶さが漂っていた。これは美人としての小夭の本能だった。彼女は下を向いて陳二狗の手がまだ自分から離れていないのを見て、どうしていいかわからなかった。陳二狗は身を屈め、ほとんど彼女の耳に噛みつきそうになりながら言った。「小夭、今家に誰かいるか？」
小夭は慌てて携帯を取り出し、張兮兮に電話をかけ、震える声で言った。「兮兮、今日何時に帰るの？」
「私は今夜まず恒隆広場でショッピングして、それから顧炬と彼の大勢の悪友どもとバー巡りするから、少なくとも朝の四時まで帰れないわ。まさか、この格格様に会いたくなったかしら？」
小夭は急いで言った。「別に何でもないわ。切るわね。ゆっくり楽しんでね。」
陳二狗の迅速な行動力はこの時も十分に発揮され、小夭を引っ張ってバーを出た。小夭はまだ勤務時間中だったが、バーの責任者は文句を言う勇気もなかった。ダンスフロアの端で大きなお尻の美女たちに目配せしていた王虎剩は一目で陳二狗を見かけ、よだれを拭いながら下品な顔で言った。「おやおや、早いな。私の予想より丸二週間も早い。さすが私の兄弟だ。女を落とす腕前は半端じゃない。こんなに良くて若くて瑞々しい白菜が、こうして君のような犬野郎に食われちまうなんてよ。」
タクシーを呼び、心臓が高鳴り、顔が真っ赤な小夭は運転手の顔すら見られず、まるで二人がこれから何をしに行くのかを見透かされるのを恐れているかのようだった。彼女は心の中で、狗兄はただお茶を飲みに行くだけ、それだけだと、あるいはバーでのようにただキスをするだけかもしれないと自分に言い聞かせた。
小夭は緊張していたが、陳二狗も同様だった。手のひらは既に汗でびっしょりで、今日は美女と目を合わせるだけという単純で気楽なものではなく、本当の肉弾戦になる。この時誰かが彼の良い事の邪魔をしようものなら、見つけ次第切り捨てるだろうと見積もっていた。陳二狗は多くの女性と関係を持った色事師ではなく、ロマンチックな感性もなかった。少なくとも今の彼から見れば、男女の最終的な関係とは一つのベッドの上で転げ回ることに過ぎなかった。俗っぽい？実はこれこそが真理なのだ。
小夭は俯いたまま陳二狗を団地に導き、そのマンションに入り、エレベーターに乗った。そして部屋に入るやいなや、陳二狗は彼女を抱き上げ、ドアを蹴って閉めた後、ただ一言「ベッドはどこだ？」と尋ねた。
小夭は自分の部屋の方を指さした。陳二狗に寝室に運ばれ、一枚また一枚と衣服がゆっくりと脱がされていく中、彼の野性的な眼差しを見つめながら、彼女は恥ずかしいことに、自分の体に対する彼の凝視に恥じらいを感じるどころか、むしろこの男を征服したという達成感を覚えていることに気づいた。この瞬間、彼女は自分が完全に救いようがないことを知った。目を閉じると、この男の暖かい手のひらにはタコができていて、髭はちくちくして、くすぐったさも感じさせた。彼女は以前、なぜ女性が男性とあんな汚らわしいことをするのが好きなのか理解できなかった。だがこの時、彼女は思わず手を伸ばして自分の体を思うがままに愛撫する陳二狗の頭を押さえ、もう一方の細い手は、青ざめて力なくベッドのシーツをしっかりと握っていた。ベッドの上での男女の戦いで、女性が受動的に不利にならないことは極めて稀だった。
少なくとも今夜、この少し粗野だが嫌悪感を抱かせない彼は彼女の男だった。
初めては痛いと知っていたが、小夭はこんなに痛いとは知らなかった。
部屋にはベッドサイドランプだけが点いていた。小夭は目を開け、目尻に涙を湛えながら、初めて徹底的にこの男をじっくりと見つめた。
彼女は彼が好きだった、とても好きで、子供の頃に囲碁に夢中だったように大切に思っていた。
彼はどうなの？
彼女の体より、彼女自身が好きなの？小夭は笑った。この世の男たちは皆そう。彼女は自分のことをよく分かっていた。自分は他の女の子より少し顔が綺麗で、雰囲気が少し良くて、目が他のイケメン好きより澄んでいる普通の女性に過ぎなかったのだ。陳二狗と指を絡ませながら、小夭は彼の顔を見つめた。どうあれ、体を彼に捧げるのは、表裏のある遊び人に捧げるよりずっとマシだ。
この男が彼女の将来の夫になれたらそれが一番良いけれど、もしそうならなくても、小夭は将来指輪を交わす男に申し訳ないとは思わなかった。悪いのは、彼女のウェディングドレスを買ってくれる男が現れたのが遅すぎたことだ。そしてもう一つ確かなことは、プライドの高い彼女は、これからの男性に対して、今この男に対するような無謀な恋心は二度と持たないということだ。
陳二狗が安堵のため息をつき、小夭を抱きしめると、心の中の欲望が少しずつ引いていった。腕の中の羊脂の玉のように柔らかい体に温もりを感じた。小夭の目尻の涙を拭いながら、彼は優しく尋ねた。「俺を責めてるのか？」
小夭は頷いた。実際、この一歩は早すぎたと感じていた。心の準備もできていなかった。責めていないと言えば嘘になるが、決して彼を恨んでいるわけではなかった。
全裸の陳二狗は笑いながら、服から煙草とライターを取り出し、ベッドから降りて窓際に行った。カーテンを開けて夜景を眺め、アパートの18階から見下ろすと、陳二狗の高所恐怖症は意外にも発作を起こさなかった。彼は煙草に火をつけ、遠くを眺めた。
この瞬間、小夭は驚きの発見をした。この痩せて見える男が、実は驚くほど素晴らしい体格を持っているのだ。彼女は絵を学んだことがあり、中国美術学院も受験して、あと数点差で落ちた。その専門知識がなくても、彼の体のプロポーションが息を呑むほど完璧だと分かっていた。彼の筋肉は、ジムのマッチョな男たちのような見た目だけの役立たずなものではなく、目立ちすぎず、しかし十分な爆発力を持っていた。パンと一蹴りで黃宇卿を吹っ飛ばせたのも納得だ。
こっそり明かりをつけた小夭は、少し色っぽい気分で陳二狗の肉体をもっとよく鑑賞しようと思った。
しかし、すぐに口を押さえた。
それは彼女が生涯で見た中で最も衝撃的な光景だった。
この男の背中には獣の爪痕のような無数の傷跡が縦横に走り、ざっと数えただけでも九箇所もあり、まるでこの世界を嘲笑うかのようだった。
小夭はこれまで、つまらない恋愛小説に出てくる男の寂しげな後ろ姿なんて、わざとらしい誇張表現だと思っていた。なぜなら、彼女は今まで心に残る魅力的な後ろ姿など見たことがなかったからだ。
彼女は必死に口を押さえた。彼女のこれまでの人生は順風満帆で、温室で育った花のように成長してきた。二十五、六歳の男が背中一面の傷跡を持つようになるには、どんな人生を送ってきたのか想像もつかなかった。これが男の勲章なのか？布団に包まったまま、タトゥーのようなその背中を見つめた小夭の心は、強く締め付けられるような感覚がした。この男を逃したら、もう二度とこんな荒涼とした光景は見られないと分かった。これこそが男の最高の刺青だ！