第117章 人質の救出

大男は口を開きかけたが、怒鳴り声を上げる前に、命が先に体から離れていった。

張元清は何度か確認し、完全に死亡したことを確認してから、やっとおばさんの方を向いた。

江玉餌は目を丸くし、卵が入るほど口を開けたまま、信じられない様子で甥を見つめていた。

この表情は気に入った......張元清は視線を下げ、机の下で震えている中年女医師を一瞥し、手刀を振り上げて相手を気絶させた。

女医師は呻き声を上げ、横倒しになった。

張元清は手刀を下ろし、本能的にこれは荒々しすぎて礼儀に欠けると感じたが、同時に自然なことだとも思い、深く考えずにおばさんの方を見た。

「元、元子......」

おばさんは言葉を詰まらせながら、潤んだ美しい瞳には驚きと戸惑いが満ちていた。まるで甥が突然ここに現れたことを受け入れられないかのようだった。

しかし同時に、その驚きと戸惑いの中には、最も助けを必要としている時に、最も信頼する人が天から降りてきたような喜びも混ざっていた。

「おばさん、大丈夫？」

江玉餌は「わっ」と泣き出し、燕のように甥に飛び込んで抱きつき、小さな声で啜り泣いた。

張元清はおばさんの背中を優しく撫でながら、低い声で慰めた。「今は説明する時間がない。ここで大人しくしていて。私があの悪党たちを片付けてくる。何か聞きたいことがあったら、夜に私の部屋に来て。その時に話そう。」

悪党たちがこれほど大きな事件を起こした以上、生き残った者たちは全員守秘義務契約を結ばなければならない。そしておばさんは先ほどの火使いの行動と自分の出現を目撃してしまった以上、「超能力」の存在を隠すことはもはや不可能だった。

さらに急いで来たため変装もしていなかったが、霊界には記憶消去の仕組みがないので、思い切って身分を「自白」することにした。

張元清は、家族を救うのに隠し立てする必要はないと考えた。積極的に明かさなかったのは、家族の平穏な生活を壊したくなかったからだ。今や彼女が霊境歩行者の事件に巻き込まれた以上、成り行きに任せることにした。

「行かないで......」江玉餌は甥の腰にしがみつき、恐怖に震える声で言った。「彼らは銃を持っているわ。」

張元清はこのような親密な接触に少し戸惑いながら、優しく彼女を押しのけ、低い声で言った：

「下階に爆弾がある。彼らを止めないと、病院の人たち全員が死んでしまう。信じて。」

彼は真剣な表情を作り、おばさんが鼻をすすり、素直に頷くのを見て、心の中で思った。どうやら今の自分は独り立ちできる大人の雰囲気が出ているらしい。おばさんも自分の王者の気に圧倒されたようだ。

彼はおばさんに椅子に座るよう促し、次の行動を考えながら、双方の利点と欠点を素早く分析した。

李顯宗の弱点は時間だ。他の区の執事や長老たちが到着するまで、病院に長居するわけにはいかない。到着されれば、李顯宗は間違いなく死ぬだろう。

だから、この惑わしの妖の考えは、最短時間で「元始天尊」を病院に引き込み、爆弾を爆発させることだろう。

爆弾は悪党たちの強みだ。一度爆発すれば、多数の死傷者が出て、トップニュースになるだろう。

康陽區のすべての公認の行者が処分を受けることになる。

だから次に最も重要なのは、爆弾を処理することだ。

「爆弾の遠隔操作装置は、きっと李顯宗の手元にはない。彼がこのテロを実行できたのは、怪眼の判官の『下僕』が共倒れを覚悟しているからだ。自爆テロだが、李顯宗は共倒れするつもりはない。こういう人間の心の中では、一般人の命など自分と比べものにならないはずだ......」

「悪党はまだ五人いる。短時間でこれだけの霊境歩行者を倒すのは不可能だ。遠隔操作装置を特定するのが鍵となる。」

張元清の思考は非常に明確で、すぐに計画を立てた。まず爆弾の制御装置を持っている悪党を倒し、爆弾を処理する。そうすれば後は余裕を持って対処できる。

では爆弾の遠隔操作装置をどうやって特定するか？張元清は問霊を使い、この火使いの死体から手がかりを探ることにした。

考えたらすぐに行動に移し、張元清の目の奥が漆黒に揺らめき、死体に残る霊と交信し、それを呼び出して一気に飲み込んだ。

江玉餌は目を大きく見開き、目の縁が赤くなり、状況が理解できない様子で、詳しく聞くのも怖いといった表情の少女のようだった。

十数秒後、張元清は目を開き、非常に厳しい表情を浮かべた。

爆弾は二箇所にあり、一階と二階にそれぞれ一つずつ設置されている。一階の爆弾の遠隔操作装置は二階の悪党が持っており、二階の爆弾の制御装置は一階の悪党が持っているのだ。

つまり、遠隔操作装置を持つ二人の悪党を同時に倒さなければならない。

「一人で一階と二階の悪党を同時に倒すのは無理だ。藤遠に手伝ってもらうか？いや、彼が病院のロビーに入った瞬間に爆弾が爆発してしまう......」

張元清は携帯を取り出し、素早くメッセージを打って李東澤に送った。

そして、おばさんの方を向き、低い声で言った。「ここに隠れていて、絶対に外に出ないで。爆発が起きても、慌てないで。」

おばさんは素直に頷き、心配そうに「あなたは？」と聞いた。

「私は大丈夫......」張元清は手を振り、その時携帯が振動し、李東澤からメッセージが届いた：

「袁隊長が二分後に到着します。」

........

一方、外来棟の外で、野球帽とマスクを着用した藤遠がインターホンのボタンを押した：

「李顯宗、私が見えているはずだ。」

インターホンからだらけた笑い声が聞こえてきた。「お前が元始天尊かどうか、どうやって分かるんだ？マスクと帽子を取って、見せてみろ。」

藤遠は淡々と言った。「マスクと帽子を取ったところで、私だと確信できるのか？」

「もっともだ！」李顯宗の笑い声が響いてきた：

「では、お前を元始天尊として扱おう。ヒントを一つやろう。一階の受付カウンターの下に爆弾が仕掛けてある。あと数分で自動的に爆発する。制御装置は黒いジャケットを着た奴が持っている。病院の一般人を救いたければ、急いで行動しろ。」