結局、この練習の結果は当然のことながら、庄司夏は最後まで口づけすることができなかった。
やはり、庄司輝弥のような変わった趣味の持ち主ばかりではないようだ……
雨宮由衣は寮に戻り、メイクを落として風呂に入り、明日はどんなメイクにしようかと考えながらパソコンを開いた。
大学の授業は彼女にとってもはやそれほど時間を費やす必要がなく、ネットで監督や脚本家などの映像関連の本をたくさん購入して、独学で勉強する時間を確保することにした。
結局、大学に合格したのはただの始まりに過ぎない。彼女は雨宮昇二と雨宮望美から父親の全てを取り戻さなければならない。
当時、彼女は父親が無能だと責め、黒田悦男と一緒になれないことを嘆いていたが、実は家族を破滅させたのは自分自身だったことを知らなかった。
その時、雨宮望美は黒田悦男を装って彼女を人気のない酒場に誘い出し、仲間たちと共に白い粉末を吸引させ、意識が朦朧としている間に、彼女が薬物を使用している様子を撮影した。
当時、部屋の中は男女が入り乱れ、彼女自身も服装が乱れた状態で何人もの男たちに囲まれており、見た者は誰もが乱交を連想するような状況だった。
父親を怒らせて逆効果になることを恐れなければ、雨宮望美はおそらく思い切って彼女の清白を奪わせていただろう。
このようにして、叔父さんはこれらの証拠で父親を脅し、株式を譲渡させ、さらに公金横領の罪を認めさせた。
父親は幼い頃から彼女をとても可愛がり、家族全員が彼女を宝物のように大切にしていた。
彼女が海外旅行中にテロリストの襲撃で命を落としかけ、精神的に大きなショックを受けた時、両親は自責の念に駆られ、すぐに彼女を国内に連れ戻し、それ以来まるで目の中に入れても痛くないほど大切に守ってきた。
おそらく両親の過保護が、彼女をあまりにも純粋で人を信じやすい性格にしてしまったのだろう。
父親は最近一人で外出しないよう警告していたが、彼女は黒田悦男とデートするために、こっそりとボディーガードから逃れて出かけてしまった。
結局のところ、黒田悦男からの誘いだったので、たとえ空から刃物が降ってきても約束に行くつもりだった。まして父親の警告なんて些細なことだった。
当時、叔父さんの脅しに直面した父親は、躊躇なく彼女を守ることを選び、たとえ雨宮家全体を手放すことになってもそうした。