第63章 すごいね

雨宮由衣の部屋がドリームアイドルドラマのような雰囲気だとすれば、庄司輝弥の部屋は恐怖映画のセットのようなものだった。錦園にある彼のダークテイストの寝室と同じような雰囲気が漂っていた。

雨宮由衣が部屋に入ると、すでに誰かが待っていた。

庄司輝弥の専属医師、黒川尊だった。

二人が入ってくるのを見て、黒川尊は立ち上がった。「九様、雨宮さん」

庄司輝弥は、黒川尊がこの時間に彼の部屋にいることにすっかり慣れているようで、無表情のままベッドの方へ歩いていった。

雨宮由衣は庄司輝弥の後ろについて行きながら、少し躊躇いがちに「あの、私がここにいても邪魔になりませんか?」

彼女は庄司輝弥が催眠術を受けるときは誰にも邪魔されたくないことを知っていた。

黒川尊は雨宮由衣を一瞥した。理論的には確かに邪魔になるはずだ。催眠術は完全に密閉された空間で、部外者がいない状態で行わなければならない。

しかし、今夜の彼らの推測と、雨宮由衣が庄司輝弥本人に連れてこられたことを考えると、追い出すわけにもいかず、「とりあえずやってみましょう」と言った。

「はい」雨宮由衣はようやく頷いた。

ベッドに横たわった庄司輝弥は、彼女が遠くに立ったままなのを見て、眉をひそめた。

雨宮由衣は困っていた。庄司輝弥は彼女に付き添うように言っただけで、その「付き添う」がどういう意味なのか分からなかった。それに黒川尊もいるのに、直接ベッドで一緒に横になるわけにもいかないだろう?

「こっちに来い」雨宮由衣がまだ迷っている間に、例の悪魔の忍耐が尽きた。

危険な気配を感じ取った雨宮由衣は、もはやそんなことを気にしている場合ではなくなり、素早くベッドの端に腰を下ろした。

次の瞬間、腰に強い力が加わり、男の長い腕が彼女を引き寄せ、頭が自然と彼女の腹部に寄り添った。

雨宮由衣はベッドの頭板に寄りかかり、腰を枕のように抱かれたまま、身動きひとつできなかった。

黒川尊は催眠術の準備をしながら、雨宮由衣の態度の変化に少し驚いた。

以前の雨宮由衣は、庄司輝弥がどれほど恐ろしい存在か知っていながら、自分から壁にぶつかるまで引き下がることはなく、決して折れることはなかった。