何の準備もないまま突然、人前で告白された雨宮由衣は、この瞬間、心が崩壊しそうだった。
頭の中は「終わった、終わった…」という言葉だけが渦巻いていた。
彼女はようやく死地から逃れて大きな災難を乗り越えたと思ったのに、すぐさま加瀬東が現れた。
一体どこで問題が起きたのだろう?
もしかして加瀬東は彼女への復讐として、付き合ってから振るつもりなのだろうか?
雨宮由衣はすぐにその可能性を否定した。なぜなら、それは敵に八百の傷を負わせるために自分が千の傷を負うようなもので、加瀬東が正気であれば、そんな自虐的な方法で復讐するはずがないからだ。
まさか昨夜のことが原因?
もし策略でないとすれば、考えられる理由はそれしかなかった。
ただメイクをしていない姿を見られただけで、それも一瞬のことだった。彼女は全く気にしていなかったし、加瀬東は酔っ払っていたから、はっきり見えていなかっただろうと思っていた。まさかあの一目が、こんな大きな問題を引き起こすとは。
この顔至上主義の世の中め!
加瀬東は学校でも有名人だ。そんな有名人が清風で有名な不美人に公開告白するなんて、こんな爆弾級のニュースは半日もしないうちに学校中に広まるだろう。庄司輝弥の耳に入るのも時間の問題だ。
庄司輝弥の性格からすれば、この一件だけで、彼女がこれまでやってきたことすべてが水の泡になってしまう…
やっと数日は平穏な日々が送れると思った雨宮由衣は、疲れ果てて言葉も出なかった。
「加瀬くん、眼科に行った方がいいと思うわ…」雨宮由衣は額に手を当てながら、力なく言った。
雨宮由衣の言葉は、みんなの心の声そのものだった。周りの人々は密かに頷いていた。
加瀬東の親友たちは心の中で呟いた。眼科どころか、一番診てもらうべきは精神科だろ!
加瀬東は眉間にしわを寄せながら目の前の女子を見つめ、一字一句はっきりと言った。「雨宮由衣、僕は本気だ!」
雨宮由衣は当然断るつもりだった。彼女は何の証拠も残せない。でも人前で自分に彼氏がいることは言えない。学校に早恋がバレたら校則違反で記録に残る。彼女は加瀬東のように理事長の父親がいて何でも許される立場ではなかった。
そこで雨宮由衣は言った。「ごめんなさい。あなたが私をからかっているのか本気なのかわからないけど、私はあなたに興味ないわ!」