レストランはもう閉店時間に近づいており、徐々に雨宮由衣たちのテーブル席だけが残っていた。
最近、雨宮由衣の睡眠リズムは規則正しく、普段ならこの時間にはもう寝ているはずだった。そのため、今は眠気に襲われていた。
さらに待つこと数分、相手はまだ来ず、雨宮由衣のまぶたはますます重くなり、顎を支えていた手が机に伏せる形になり、そのまま気づかないうちに眠りに落ちてしまった。
加瀬東は時計を見ていたが、顔を上げると雨宮由衣が気持ちよさそうに眠っているのに気づいた。
彼は少女の寝顔を見つめながら、あの夜の一瞬の出来事を思い出し、耳が熱くなってきた。
彼女があんなにはっきりと、もし嘘をついていたら彼の彼女になると約束したことは、実は彼女も自分のことを好きだから承諾したということなのだろうか。
そう考えながら、刻一刻と近づく時間を確認し、加瀬東は思わず興奮して、思わず少女の頬に手を伸ばしながら、「由衣...」と呼びかけた。
その時、「がらっ」という音とともに、レストランのガラスドアが夜風に乗って、透き通るように白い長い指によって押し開けられた。
「申し訳ありませんが、もう閉店時間が...あ...」店主の言葉は途中で夜風に消えていった。
タッタッタッという足音が遠くから近くへとはっきりと聞こえてきた。
加瀬東は何故か背筋が寒くなり、反射的に入り口の方を見た。
次の瞬間、瞳孔が激しく収縮した。
視界の中で、一人の男がゆっくりと彼らの方へ歩いてきていた。
男は古典的な黒のスーツを身にまとい、冷たい淵のような瞳は人の魂さえも凍らせそうだった。
彼が一歩一歩近づいてくる様は、まるで人間ではなく、夜風と月光に乗って人間界に降り立った魔王様のようで、広々としたレストランが途端に狭苦しく感じられた。
生まれながらの気品と、日月をも色褪せさせるような妖艶な完璧な顔立ちを見て、加瀬東の脳裏に雨宮由衣が言っていた言葉が浮かんだ...
庄司夏よりも百倍もかっこいい...
この世界に、こんな人が本当に存在するなんて、しかもまさに自分の目の前に現れるなんて!
加瀬東が一人の男性を見つめすぎて我を忘れていることに気づいた時には、その人物は既に彼の目の前まで来ていた。
「あの...あなた...何かご用でしょうか?」加瀬東は思わず尋ねた。