時間は一分一秒と過ぎ去り、あっという間に二十分が経過した。
しかし、時間になっても、庄司輝弥は現れなかった。
二十分ちょうどになった時、井上和馬から電話がかかってきた。
「もしもし、雨宮さん、大変申し訳ありません。九様がこちらで少し用事に手間取っておりまして、もう少々お待ちいただく必要がございます!」
「あ……何か急用でも?」雨宮由衣は慌てて尋ねた。
井上和馬の声色も何故か少しおかしく、しばらく言葉を濁してから、「い、いいえ、大したことではありません。もう少しだけお待ちください!」
「ああ、分かりました」雨宮由衣はようやく安心した。
電話を切った後、雨宮由衣は向かいの加瀬東に向かって言った。「彼が急用で少し遅れるみたいです」
加瀬東は腕を組んで、まるでそう言うことを予想していたかのような表情で、ゆっくりと口を開いた。「構わないよ、待てるから」