やはり、正直に話すのが正解だった。
翌朝、雨宮由衣は気分よく教室に向かった。
席に着いてしばらくすると、頭上に影が落ちた。加瀬東が険しい表情で彼女の前に立っていた。
雨宮由衣は怪訝な目つきで相手を見つめた。
教室の他の生徒たちも、二人の様子を興味深そうに見守っていた。
加瀬東は唇を引き締め、真剣な表情で雨宮由衣に向かって言った。「雨宮由衣、君がどこでそんな噂を聞いたのか分からないけど、誓って言うよ。僕は賭けに負けたから君を追いかけているわけじゃないし、からかっているわけでもない。本気なんだ!信じてくれ!」
「おぉー」周りのクラスメートたちがどよめいた。
雨宮由衣は顔を曇らせた。昨夜、苦心して考え出した噂を打ち消す方法が、この男の一言で台無しになってしまった。
誤解されて傷ついた表情を浮かべる男子を見て、雨宮由衣は額を押さえながら言った。「私が昨日言ったことも本当よ。あなただって信じてくれなかったでしょう?」
昨日言ったこと?
彼女に彼氏がいるって言ってたことか?
「それとこれとは違う!」加瀬東は正論を振りかざした。
「今夜、会わせてあげる」雨宮由衣の声は小さく、加瀬東と隣の庄司夏にしか聞こえなかった。
加瀬東は雨宮由衣の言う「彼」が誰を指しているのか瞬時に理解し、一瞬驚きの色を見せたが、すぐに落ち着きを取り戻した。「いいよ!」
ようやく放課後になった。
夕食後、キャンパスに人気が少なくなった頃、雨宮由衣は加瀬東を呼び出し、二人で学校の外れにある食堂へ向かった。
加瀬東は向かいのソファに座り、胸を張った表情で、雨宮由衣の策略を見透かしたような様子だった。
彼女は約束を反故にするか、誰かに頼んで彼氏のふりをさせるかのどちらかだろう。後者の可能性が高いが、目が見えなくない限り、そんな嘘は見破れる。
とにかく、諦めるつもりはない!
雨宮由衣は加瀬東の考えていることを察していたが、何も言い返さず、携帯の時計を確認した。庄司輝弥はあと20分ほどで到着するはずだ。
「一つ聞いていいかな?」向かいの加瀬東が突然口を開いた。
雨宮由衣は頷いた。「何?」
加瀬東は雨宮由衣の派手なメイクの顔を見つめ、軽く咳払いをした。「君は...君はこんなに可愛いのに...なぜわざとこんな風にしているんだ...」