暗がりで見ていた雨宮由衣は、この様子を見て思わず「まずい」と心の中で叫んだ。
江川麗子の様子がおかしい!
まさか彼女が介入したせいで、江川麗子を目覚めさせることができず、逆に早まって自殺してしまうのではないか?
この時期なら、江川麗子の蘇我隼樹への想いはそれほど深くないはずで、早めに目覚めさせれば救えると思っていたが、どうやら見込み違いだったようだ。
二人は幼なじみで、江川麗子の幼い頃からの最大の願いは蘇我隼樹と結婚して彼の妻になることだった。今、その目標が突然崩れ去り、世界が崩壊したと言っても過言ではない。
しかも、同時に裏切った相手は彼女が最も信頼していた親友だった。
沢田夢子の人心掌握の手腕は、彼女自身が身をもって経験したものだった。当時の彼女に対しても、天にも昇るような優しさで接し、遊びにも付き合い、泣き笑いを共にし、授業をサボることにも付き合い、黒田悦男を追いかけることにも、留年することにさえ付き合ってくれた。