一瞬にして錦秀バスケ部の男子たち全員が興奮して叫び出した。
「おおおおー!」
「おいおい!マジかよ!風間、お前やるじゃん!今日の様子がおかしかったのは失恋じゃなくて、恋愛してたってわけか。彼女のことばっかり考えてたんだな!」
「なるほど、こいつがさっきから観客席を見てた理由がわかったぞ!」
「お嬢さん、こいつの顔に騙されないでくださいよ!」
……
「うっせぇ、全員黙れ!」風間は不機嫌そうに皆を睨みつけた。
「じゃあ、私行くね。友達が待ってるから」江川麗子が言った。
風間は名残惜しそうな表情を浮かべ、少し不安そうに尋ねた。「じゃあ...また?」
「うん」江川麗子が頷いた。
その「うん」を聞いて、地球を一周して跳ね回っていた風間の心臓は、やっと体に戻ってきた。
振られなかった!今夜のデートはまだ有効だ!
錦秀側が騒がしく冷やかしの声が飛び交う中、清風側は異様な雰囲気に包まれていた。
ほぼ全員の視線が蘇我隼樹に注がれていた。
ついさっきまで、江川麗子が自分を探しに来たと勘違いしていたのに、実は相手側の風間を探しに来ていたのだから。
「わー!超大スクープじゃん!江川麗子と風間?この二人いつから知り合いなの?」
「びっくりしたけど、なんかこの二人すごく似合ってない?風間があんなに照れてる姿初めて見たわ、可愛すぎ!」
「確かに似合うよね。しかも家柄も釣り合ってるし。風間も家が結構いいって聞いたし!」
「江川麗子が振られた後、立ち直れないと思ってたのに、あっという間に次を見つけたなんて!」
「余計な心配してるわよ。江川麗子のスペックなら、誰でも手に入れられるでしょ?むしろ蘇我隼樹の方が目が節穴だったんじゃない?」
……
蘇我隼樹は、江川麗子が他の男子に水を届け、親しげに汗を拭いてあげる様子を目の当たりにして、顔を真っ黒にしていた。周りの噂話を聞いて、さらに表情が険しくなった。
江川麗子が彼らの側を通り過ぎようとした時、蘇我隼樹は大股で歩み寄り、彼女の行く手を遮った。「江川麗子、これはどういうつもりだ?」
このいまいましい女め、こんなに大勢の前で自分に緑の帽子をかぶせるとは。
「何が?」江川麗子は眉をひそめた。