加瀬東は雨宮由衣を寮まで護衛すると言い張り、その道中の光景は想像に難くない。
周りの人々は、背の高いハンサムな男子学生がバスケットのユニフォーム姿で、女子学生の傍らをゆっくりと付き添い、まるで花の守護者のような姿に、乙女心をくすぐられた。
しかし、彼が護衛している女子学生の姿は一変していた。恐ろしい爆発頭に濃いスモーキーメイク、真っ赤な大きな口紅、見るに堪えないほどだった。
「なんてこと!あの不細工な雨宮由衣にも追っかけがいるなんて!」
「しかも、追っかけているのは清風のボスよ!」
「デマかと思ってたのに!これは本当に驚いた!」
見物人の中で、沢田夢子は二人を遠くから眺め、清風の有名人が雨宮由衣に親切にする様子を見て、表情が一瞬こわばった。
今日は雨宮由衣が泣き崩れる姿を見られると思っていたのに、彼女は何事もなかったかのように平然としているどころか、得意げな様子で注目を集めていた。