第109章 禁忌を犯す

三十分後、ガランバー。

最上階のVIP専用個室の入り口で、雨宮由衣は足を止め、深く息を吸い込んだ。これから何が起きても冷静でいなければと自分に言い聞かせた。

「雨宮さん、どうぞお入りください」

井上和馬がドアを開けようとした時、雨宮由衣は慌てて止めた。「ちょっと待って、開けないで!まず様子を見させて!」

雨宮由衣は静かにドアを少し開け、中を覗き込んだ。

後ろで井上和馬は、まるで泥棒のような雨宮由衣の様子を見て、思わず口角が引きつった。しかし、彼女が協力してくれるだけでも天に感謝だった。

十分な心の準備をしていたつもりだったが、雨宮由衣がドアを開けた瞬間、中の雰囲気に驚愕した。

個室の中には人が少なく、彼女が知っているのは林翔太だけで、他は庄司輝弥の仲間だろうと思われる数人だった。