第170章 正室の度量

一瞬にして、雨宮由衣は冷や汗が流れ出した。これは本当に、敵に八百の傷を与えて、自分に千の傷を負うようなものだった!

でも仕方がない、もう飛びついたのだから、このまま続けるしかない。

雨宮由衣は冷遇された妃のように男の胸に寄り添い、甘えるように不満を漏らした。「私がこんなに長く来ているのに、全然相手にしてくれないの。これが何かそんなに面白いの?ずっと見てるけど、私より綺麗なの?私と、どっちが綺麗なの?」

まさに典型的な悪女のセリフだった。

車の中で、仕切り板は視界を遮れても音は通してしまう。影流は今頃聞いて気が気じゃないだろう。

前から歯ぎしりの音が聞こえてきそうだった。

実際、雨宮由衣の予想は当たっていた。

影流が持ち歩いている軟剣はすでに鞘から抜かれていた。「この妖女!!!」