リハーサルは異様な雰囲気の中で終わった。
庄司夏は彼女を見つめ続けるだけで、他には何もしなかったため、雨宮由衣は腹を立てる理由すら見つけられなかった。
やっとリハーサルが終わり、雨宮由衣が逃げ出そうとした時、隣にいた庄司夏が最後のキスシーンの振り付けを終えた直後、立ち上がった瞬間に突然よろめき、何の前触れもなく倒れてしまった。
「庄司夏!」
「ああ!大変!庄司夏が気を失った!」
「誰か来て!」
一瞬のうちに悲鳴と叫び声が次々と上がり、現場は混乱に陥り、全員が庄司夏の周りに集まった。
雨宮由衣は呆然とし、完全に警戒態勢に入った。
こいつ、また何か企んでるの?
雨宮由衣は水晶棺桶の小道具の中に横たわりながら、人だかりの隙間から庄司夏を見た。少年は顔色が真っ青で、苦しそうに地面で体を丸め、呼吸も次第に荒くなっていった。
雨宮由衣は一瞬戸惑った。この様子は、演技とは思えない……
「大変!庄司夏はいったいどうしたの?さっきまで大丈夫だったのに、どうしてこんな状態に?」
「庄司夏の喘息が発作を起こしたの!」藤原雪は焦りながら叫んだ。
「庄司夏って喘息持ちなの?早く薬を持ってないか確認して!」
「確認したけど、持ってないみたい。長い間発作が出てなかったのに、どうして急に?」
「そんなの聞くまでもないでしょ!絶対に雨宮由衣のブスのせいよ!早く保健室に連れて行きましょう!」
傍らにいた雨宮由衣は「……」
冗談じゃない、棺桶に横たわってるだけなのに巻き込まれるの?
混乱の中、藤原雪と別の女子学生が急いで庄司夏を起こそうとした。
すると、空気を切り裂くような「パン」という音が響いた。
庄司夏は藤原雪の手を強く払いのけ、苦しそうに息を切らしながら、苦痛で潤んだ瞳で雨宮由衣の方をじっと見つめ、「由衣……由衣が連れて行って……」
くそ!またか!?
庄司夏を支えようとしていた藤原雪の手が突然硬直し、雨宮由衣を見る目が極限まで暗くなった。
元々彼女は雨宮由衣なんて眼中になかった。こんなレベルの女と争うなんて格が下がると思っていたのに、このブスが庄司夏に一体何をしたのか、こんなに夢中にさせてしまうなんて!