第147章 不純な親切

翌朝。

教室に向かう前に、雨宮由衣は一度寮に戻った。

鍵を取り出す前に、寮のドアが中から素早く開かれた。「由衣、お帰り!」

江川麗子が嬉しそうな顔で玄関に立っていた。きっと足音を聞いていたのだろう。

一人暮らしに慣れていた由衣は、突然誰かがドアを開けてくれるという状況に一瞬戸惑った。

「うん!早く話して、昨日のデートはどうだったの?」雨宮由衣は急いで詮索し始めた。

江川麗子は少し躊躇してから、「風間君に本当のことを話したの」と言った。

雨宮由衣は一瞬固まった。「え?何を話したの?」

「デートに誘ったのは由衣のアイデアだったことと、私自身も最初は蘇我隼樹を怒らせるためという気持ちがあったって。彼を利用したくなかったから、はっきり話したの。今の私の状態では、新しい恋愛関係に入る余裕がないし、それは彼に対して公平じゃないって」と江川麗子は答えた。

「そう...」雨宮由衣はため息をついた。

江川麗子の性格を考えると、この結果は少し予想できていた。そもそも二人がそんなに早く上手くいくとは思っていなかった。

「大丈夫よ、まずは友達として付き合えばいいじゃない。風間君はいい人だし、あまり深く考えなくていいわ」と雨宮由衣は慰めた。

「うん」江川麗子は頷いて、続けて「そうそう、昨夜父から電話があって、資金に問題があるという理由で蘇我家にお金を送らなかったって。同時に、他の共同プロジェクトの資金も密かに引き上げているけど、向こうは疑っていないみたい」と言った。

雨宮由衣は微笑んで、「江川おじさんのことだから問題ないわ。安心して!さあ、朝ご飯食べに行きましょう!」

二人は話しながら教科書を整理して階下に降りた。

食堂に向かおうとしたところ、あいにく胸焼けがしそうな人物とばったり出くわした。

蘇我隼樹は豆乳と蒸し餃子を手に持ち、突然二人の行く手を遮った。イケメンの顔に明らかに不本意な笑みを浮かべながら、江川麗子に向かって「麗子、まだ朝ご飯食べてないよね?買ってきたんだ。無名居の豆乳と蒸し餃子が好きだったよね?」と声をかけた。

雨宮由衣はその様子を見て眉を上げた。ふん、急に親切にするなんて......

きっと蘇我家が不安になって、蘇我隼樹に注意したんでしょうね。

この時期になって気づくなんて、遅すぎるわ。