翌朝。
教室に向かう前に、雨宮由衣は一度寮に戻った。
鍵を取り出す前に、寮のドアが中から素早く開かれた。「由衣、お帰り!」
江川麗子が嬉しそうな顔で玄関に立っていた。きっと足音を聞いていたのだろう。
一人暮らしに慣れていた由衣は、突然誰かがドアを開けてくれるという状況に一瞬戸惑った。
「うん!早く話して、昨日のデートはどうだったの?」雨宮由衣は急いで詮索し始めた。
江川麗子は少し躊躇してから、「風間君に本当のことを話したの」と言った。
雨宮由衣は一瞬固まった。「え?何を話したの?」
「デートに誘ったのは由衣のアイデアだったことと、私自身も最初は蘇我隼樹を怒らせるためという気持ちがあったって。彼を利用したくなかったから、はっきり話したの。今の私の状態では、新しい恋愛関係に入る余裕がないし、それは彼に対して公平じゃないって」と江川麗子は答えた。