目標を見つけると、雨宮由衣の目が一瞬輝き、抱えている肉干を持って走り寄った。
彼女が階段を降りた瞬間、毛布の上で横たわっていた白虎は耳を震わせ、突然目を開いた。碧い獣瞳に殺気が満ちていた。
そんな目で見つめられると、背筋が凍る思いだった。
幸い、彼女は前世の経験があり、この白虎のことをよく知っていた。非常に凶暴だが、人の気持ちもよく分かる。夜に庄司輝弥が彼女と接触し、味方だと示していたので、どんなに凶暴でも彼女を傷つけることはないはずだった。
雨宮由衣は白虎の険しい視線の中、おずおずと近づいていった。近づけば近づくほど、その獣瞳の中の攻撃性と警告の色が濃くなっていくのが明らかに感じられた。
雨宮由衣はあまり近づきすぎず、四、五歩離れたところで立ち止まり、豚肉の干し肉の袋を開けて、手を伸ばして目の前で振った。「スルート……食べる?すっごく美味しい豚肉干よ!」
彼女が手を振ると、白虎は即座に牙を剥き出して危険な唸り声を上げた。
「えっと、嫌い?」雨宮由衣は仕方なく、惜しみながら唯一の牛肉干の袋も開けた。「牛肉干は食べる?これ本当に超美味しいのよ!」
「ガオー!」伏せていた白虎が突然立ち上がり、前のめりになってより凶暴に彼女に向かって「シッ」と威嚇した。
傷つけられないと分かっていても、こんな大型の猛獣を前にすると、生物本能として恐怖を感じずにはいられなかった。
雨宮由衣は心臓がドキドキしていたが、諦めたくなくて、勇気を振り絞って前に進み続けた。
一歩、二歩、三歩——
白虎まであと一歩というところで、「ガオー!」という天地を揺るがすような巨大な虎の咆哮が錦園全体に響き渡った。
雨宮由衣の鼓膜が轟音で震え、その衝撃で尻もちをついてしまった。
まさに地動山摇とはこのことかと身をもって体験した……
すぐに、ドアがバンと外から開き、井上和馬が慌てて駆けつけてきた——「どうしたんですか!!!」
上階からも足音が聞こえ、庄司輝弥は眉をひそめながら客間を見下ろした。
そこには白虎の前に尻もちをついている雨宮由衣の姿があり、周りには色とりどりの袋が散らばっていた。白虎は明らかに怒り狂い、暴走寸前の状態だった。
「雨宮さん!これはいったい?」井上和馬はこの光景を目にして呆然とした。雨宮由衣が真夜中にスルートを挑発するなんて、自殺行為ではないか。