第175章 色に惑わされる

次の瞬間、近くから「ドン」という大きな音が響いた。

雨宮由衣の視界の端に、影流の隣の壁に亀裂が入っていくのがはっきりと見えた……

青年は拳を強く握りしめ、雨宮由衣の方向を睨みつけると、秋山若葉の心配そうな問いかけも無視して、踵を返して立ち去った。

ふむ、怒って帰ってしまったか……

雨宮由衣:「……」

実は先ほど、彼女はただヒマワリの種を食べたかっただけなのに。

それにしても、秋山若葉がこの地位まで上り詰めたのも納得だ。彼女と庄司輝弥が親密にしている場面を目の当たりにしても、平然とした態度を保ち、むしろ影流を慰めに行くなんて。

このように内面も外見も完璧で、文武両道で、しかも嫉妬深くない女性は、まさに完璧そのものだ。

彼女でさえ庄司輝弥の目に問題があるのではないかと思うほどだから、彼の腹心や部下たちが思うのも無理はない。