第174章 餌を求めて

武術修行をする者は聴覚が優れているため、秋山若葉と対峙していた影流は、雨宮由衣が先ほど言ったことをはっきりと聞き取っていた。

若い男の動きが一瞬乱れ、これまで何とか抑えていた怒りが遂に爆発した。「無礼者!主に、そのようなことをさせるとは!」

秋山若葉は平然と技を繰り出して彼を制した。「影流、冷静に!」

影流は激怒した。「若葉お嬢様、あなたまでも私を止めるのですか!今日は我慢の限界です!お嬢様は少しも腹が立たないのですか?」

秋山若葉は遠くを何気なく一瞥した。「九様のような身分地位の方なら、側に数人の女がいるのは当然のことよ。」

「しかし...しかし、この女は違います!」影流は焦りながら反論した。

秋山若葉はその言葉を聞き、一瞬表情を曇らせたが、すぐに平静を取り戻した。「何が違うというの?影流、よく覚えておきなさい。彼女は何も特別ではないわ。そこまで気にする必要はないの。」

影流はまだ何か言いたそうだったが、結局黙り込んだ。ただし、心の中は全く落ち着かなかった。

どこが同じなものか!

主が本当に彼女のために瓜子を剥いたのだ。それも78粒も!!!

主の天下を動かすその手で、どうして瓜子など剥くことができようか!

最も重要なのは、主の側には今まで女性などいなかったのに、この取るに足らない、恩知らずで、面倒ばかり起こす女が、丸二年も主の側にいられるということだ。

最初は彼も、この女を眼中に入れていなかった。主の一時の気まぐれで飼われた玩具程度だと思っていた。

まさか主がこの女を老夫人の前に連れて行くとは。

主が老夫人の前に連れて行けるのは、庄司家の未来の当主夫人だけのはずだ。

主がこのような女を老夫人に会わせるとは、一体どういうつもりなのか?

こちらで影流が怒りで爆発しそうになっている一方で、雨宮由衣は庄司輝弥がパキパキと一粒ずつ瓜子を剥いてくれるのを、目を輝かせて見つめていた。

その長く力強い指が、一瞬で一粒を剥き、中身の詰まった瓜子の実が、高価で優美な白磁の小皿に次々と落ちていく様子は、まさに...魅惑的だった。

仕方がない、時として天は不公平なもので、ある人は瓜子を剥くだけで人々を魅了してしまうのだから!

生き延びるためにやむを得ず取り入るしかなかったとはいえ、雨宮由衣は自分も楽しめているような気がした。