第177章 彼の当主が好色なはずがない

階下。

影流は門の前で腕を組んで立っていた。不機嫌そうにしていたが、後ろから聞き慣れた足音が聞こえ、意外そうに振り向いた。「若葉お嬢様?当主とお話中ではなかったのですか?もうお済みになったのですか?」

秋山若葉は複雑な表情を浮かべ、首を振った。「まだです。九は忙しいので、先に戻るように言われました」

「当主がお忙しい?何かあったのですか?」影流は即座に緊張した様子で尋ねた。深都の件よりも重要なことなら、それは大事に違いない。

秋山若葉は慌てて言った。「いいえ、心配しないで」

「では当主は何をされているのですか?深都での反乱分子を一掃したばかりで、すべてが混乱状態です。みな当主の指示を待っているのに……」

秋山若葉が黙り込むのを見て、影流にはすぐに察しがついた。怒りを込めて言った。「またあの妖狐のことですか!若葉お嬢様!今ならおわかりでしょう?当主はあの女のためにこんな重要な事さえ後回しにされるのです!