第178章 彼と互角になれるほど強くなる

「うん、もう十八歳だから、お酒は飲めるの……」江川麗子は弱々しく言った。叱られることを恐れているようだった。

「今どこにいるの?」雨宮由衣は心配そうに尋ねた。

「湖のそば……」

「学校の小さな湖?」

「うん……」

雨宮由衣は頭を抱えた。「そんな酔っ払った状態で、うっかり湖に落ちたりしたら大変よ!早く寮に戻りなさい!」

この素直な子ったら、リラックスしなさいと軽く言っただけなのに、本当に真に受けちゃうなんて!

「でも私……道に迷っちゃって……」

雨宮由衣:「……」

もう、お嬢様ったら、自分の学校で迷子になるなんて。

「しょうがないわね。その場所で動かないでいて。誰かに電話して迎えに行かせるから。」

雨宮由衣は江川麗子に何度も念を押してから、風間川治に電話をかけ、小さな湖のそばにいる江川麗子を探してくれるよう頼んでから、電話を切った。

電話を切ってから、雨宮由衣は庄司輝弥の方を向いて話し始めた。「麗子からの電話だったの。前に話した新しいルームメイトよ。学校で一人で酔っぱらって、寮への帰り道が分からなくなっちゃったみたい。だから隣の学校の男子学生に電話して、探しに行ってもらうように頼んだの。その子、麗子のことが好きで、いい人なの……」

前世で庄司輝弥の彼女に対する支配は、もはや異常なまでのレベルに達していた。彼女の周りに現れる人物は全て徹底的に調査されていた。

その中には彼女の安全を守るための配慮もあったのだろうが、それでも彼女は極度に嫌悪感を抱き、拒絶していた。

前世では、彼女は逃げ出すことしかできなかった。しかし今世では、もし自分が強くなって自分を守れるようになり、さらには庄司輝弥と互角に渡り合えるようになれば、自由を手に入れられるのではないかと考えていた。

もっとも、今の彼女にとって、後者はまだ夢物語でしかなかったが。

雨宮由衣は続けて言った。「あの、気づいたらこんな時間になっちゃって、もう帰らないと。明日は土曜日だけど、朝からクラスのリハーサルがあるの。それに麗子が一人で寮にいるのも心配だし、早く若葉お嬢様と用件を済ませてください!」

庄司輝弥は相変わらず無表情で、何も言わなかったが、雨宮由衣には何となく分かった。今の彼は機嫌が悪いのだと。

本当に、庄司輝弥の心は女性以上に読みにくいと深く感じた。