まだ早い時間で、空がほんのり明るくなり始めたところで、窓枠には霧と露が付いていて、キャンパスはがらんとして人影一つ見えなかった。
しかし、江川麗子が雨宮由衣の視線の先を見ると、階下に見覚えのある人影を見つけた。
男子学生は門番のように、女子寮の前で一動もせずに立っていた。
そして江川麗子は気づいた。男子学生が着ているのは、昨夜と同じパジャマだった。
昨日雨宮由衣が電話をかけた時、風間川治はすでに寝ていて、急いで来たため、パジャマのまま飛び出してきたのだ。
でも今はもう朝なのに、まだ同じ服装で……
もしかして、帰らずにここで一晩中立っていたの?
そう思うと、江川麗子の心臓は何かに強く打たれたかのように鼓動し、すぐさま階下へと駆け出した。
雨宮由衣は江川麗子の後ろ姿を見ながら、なぜか「わが家の娘も大きくなったものだ」というような既視感を覚えた。
階下。
一人で呆然としていた風間川治は、突然走ってきた江川麗子を見て、表情が一瞬固まり、その後すぐに顔が見る見る真っ赤になり、手足の置き場に困って、「れ……麗子……」
「あなた……」江川麗子は何を言えばいいのか分からず、躊躇いながら尋ねた。「昨夜帰って寝なかったの?」
男子学生は頭を掻きながら、嘘をつく勇気もなく、まるで悪いことをした子供のように立ちすくみ、素直に答えた。「僕は……眠れなくて……」
「どうして眠れないの?」江川麗子は不思議そうに聞いた。
男子学生は唇を噛みしめ、少し黙った後、小さな声で答えた。「夢を見ているんじゃないかって怖くて、目が覚めたら……」嫁さんがいなくなってしまうんじゃないかって。
風間川治は最後の言葉を口にしなかったが、江川麗子には彼の気持ちが分かった。
この数年間、蘇我隼樹を追いかけ続けて、自分が女の子だということをほとんど忘れてしまうほどだった。誰かに大切にされる感覚さえも忘れていた。
風間川治は不器用で少し抜けているところもあるけれど、それが逆に本物らしく、安心できた。
江川麗子は目の前の人をじっと見つめ、瞳の中の暗い霧が少しずつ晴れていくのを感じながら、男子学生の緊張した視線の中で言った。「早く帰って休んでね!」