第183章 せいぜい化粧落としを顔にぶっかけられる程度

まだ早い時間で、空がほんのり明るくなり始めたところで、窓枠には霧と露が付いていて、キャンパスはがらんとして人影一つ見えなかった。

しかし、江川麗子が雨宮由衣の視線の先を見ると、階下に見覚えのある人影を見つけた。

男子学生は門番のように、女子寮の前で一動もせずに立っていた。

そして江川麗子は気づいた。男子学生が着ているのは、昨夜と同じパジャマだった。

昨日雨宮由衣が電話をかけた時、風間川治はすでに寝ていて、急いで来たため、パジャマのまま飛び出してきたのだ。

でも今はもう朝なのに、まだ同じ服装で……

もしかして、帰らずにここで一晩中立っていたの?

そう思うと、江川麗子の心臓は何かに強く打たれたかのように鼓動し、すぐさま階下へと駆け出した。

雨宮由衣は江川麗子の後ろ姿を見ながら、なぜか「わが家の娘も大きくなったものだ」というような既視感を覚えた。