「二、三年?!」渡辺光は顔を曇らせた。このような汚名を二、三年も背負えば、たとえ最後に勝ったとしても、橋本羽は完全に終わりだ。それに会社の名誉も何年も台無しになってしまう。
「他に方法はないのか?」
弁護士は少し躊躇してから言った。「示談をお勧めします。この件の影響を最小限に抑えるのが最善かと」
桧山春樹はそれを聞くや否や焦った。「そんなことできません!示談なんてしたら罪を認めたことになります。羽の人生が台無しになってしまう!」
その時、桧山春樹の向かいに座っていた灰色のスーツを着た、知的な顔立ちの男が静かに口を開いた。「つまり、橋本羽一人のために、会社のタレント全員を巻き込むというわけか?」
桧山春樹の表情が一変した。「周藤、その言い方はどういう意味だ?」
周藤史良は肩をすくめた。「桧山君、あまりに利己的すぎるんじゃないか。この件は橋本羽が原因で、会社全体に影響が及び、株価も下がり続けている。今、君たちには潔白を証明する証拠が何一つないのに、会社の全員を巻き込んで共倒れするつもりか」
周藤史良の言葉に、多くのマネージャーたちが同調し始めた。
「史良さんの言う通りです。橋本羽の過ちの尻拭いを、私たち全員がする必要はないでしょう!」
「私も今は早めに損切りするのが最善だと思います!」
周囲からの議論が沸き起こり、ほとんどの者が示談に賛成していた。さらに多くの人々の言葉の端々には不満が滲み、橋本羽の件で自分たちの担当タレントの名誉も傷つけられたことへの怨みが込められていた。
議論が飛び交う中、桧山春樹の表情は次第に険しくなり、両手は怒りで震えていた。
かつて橋本羽が輝いていた頃、多くの人々が彼にへつらっていた。今同調しているマネージャーたちの担当タレントも、誰一人として橋本羽の人気にあやかっていない者はいなかったはずだ。
今となっては、まさに落ち目に付け込むとはこのことだ!
「羽、何か言ってくれ。彼らは君を追い詰めようとしているんだ!」桧山春樹は、ずっと黙り込んでいた橋本羽に向かって思わず叫んだ。
橋本羽は会議室で静かに座っていた。周りの議論や騒がしさは全く聞こえていないかのようだった。ただ、彼の蒼白い顔色と目の下のクマが、この期間の疲れを物語っていた。