第213章 暗君の素質がますます強くなる

井上和馬は自称目が高いという当主を見て、そして隣の天然な雨宮由衣を見て、黙り込んでしまった。

この時、彼は影流が当主から「絶世無双」という結婚相手の条件を聞いた時の気持ちが本当によく分かった。

「他に聞きたいことは?」庄司輝弥が尋ねた。

雨宮由衣は首を振って、「ないです...ただ...服と手袋をありがとうございます...手袋に刺繍された小さな虎がとても可愛かったです...あなたが選んだんですか?」

庄司輝弥:「井上が用意した。」

井上和馬:「...」

当主様、良心に手を当てて、もう一度おっしゃってください!

確かに私が用意しましたが、百足もの中からやっとこの一足をお気に入りとして選んだのではありませんか!

「あぁ...」雨宮由衣は頷いて、さらに一言、「白はまだ家にいますか?」

「いる。」庄司輝弥が答えた。

井上和馬はこの言葉を聞いて、一瞬呆然とした。

どこにいるというのか、スルートはまだ見つかっていないではないか!

雨宮由衣は安心したように、「もう授業が始まるので、戻りますね。気をつけて帰ってください!」

雨宮由衣が去った後、井上和馬は即座に焦りながら庄司輝弥を見つめた。「当主様、スルートは...」

「あと一日ある。」庄司輝弥は彼の言葉を遮った。

井上和馬は言葉に詰まり、心の中で涙を流しながら、「明日雨宮様が戻られる前に、必ずスルートを見つけ出します。」

なるほど、突然スルートを探し出すように命じられたのは、美人を喜ばせるためだったのか!

認めたくはないが、当主様はますます昏君の素質を見せているような気がする...うぅ...

...

翌日の放課後。

雨宮由衣は荷物をまとめ、江川麗子に別れを告げた。

「一人で大丈夫?他の寮室に移動申請してみない?」雨宮由衣が提案した。

江川麗子は首を振って、「大丈夫よ、もうすぐ大学入試だし、一人の方が集中できるわ!」

清風は教育の質が最も高い私立の名門校だが、普通の高校の学習環境とは比べものにならない。多くの生徒は大学入試後に留学するため、入試の成績を気にせず、女子寮では毎日ブランド品や化粧品の話ばかりだった。

江川麗子は一人娘で、両親は彼女を遠くへ行かせたくないため、地元の大学を受験することにしていた。