彼女は……何を聞いたの?
彼氏!
花を包装していた店員は雷に打たれたかのように、目を見開いたまま呆然と立ち尽くしていた。
少なくとも10秒が経過して、ようやく店員は相手の言葉の意味を理解した。
目の前のイケメンが……まさか男性が好きなの?
店員の乙女心は一瞬にして粉々に砕け散った……
何とか乙女心を取り戻し、自分の反応が露骨すぎたことに気付いた店員は慌てて謝罪した。「す、すみません……失礼しました……」
「気にしないで」雨宮由衣は気にせず微笑んだ。
店員は相手の笑顔を見て、さらに胸がときめいてしまい、やっと取り戻した心がまた砕けてしまった。
なんでイケメンは全員彼氏持ちなの……
花屋を出た後、雨宮由衣は井上和馬に電話をかけた。
「もしもし、井上執事、九様は今錦園にいますか、それとも会社ですか?」