第257章 確かに大美人だ

帰り道で、雨宮由衣は花屋の前を通りかかった。

本来なら今日の商談が終わった後、庄司輝弥と一緒に食事をする予定だったが、朝起きた時には彼はすでに会社に行っていたので、話すことができなかった。

後々問題が起きないように、日頃からの機嫌取りは欠かせない。

「いらっしゃいませ!」

花屋の中で、薄緑のワンピースを着た女の子は、入り口でお客様が入店する合図の音楽を聞き、いつものように挨拶をしながら、反射的に来客の方を見た。

細長い手がゆっくりとガラスドアを押し開け、白いシャツを着た、亜麻色の短髪の若い男性が店内に足を踏み入れた。

店内には様々な花が所狭しと並び、まるで神秘的なエデンの園のよう。男性は静かな音楽に合わせてゆっくりと歩を進め、その表情は花々の間から垣間見えた。

大きな束の赤いバラの前で足を止めると、男性はその中から一輪を手に取り、蝶の羽のような長い睫毛を伏せて、そっと香りを嗅いだ。

窓格子から差し込む陽光が男性の整った横顔を照らし、艶やかな赤いバラでさえも彼の美しさを損なうことはできず、むしろ引き立て役となっていた……

「すみません、赤いバラを一束包んでいただけますか?」

透き通るような低い声が耳に届くまで、店員は夢見心地から我に返れずにいた。男性の琉璃のような瞳と問いかけるような視線に出会い、頬が急に熱くなり、慌てて答えた。「はい、もちろんです。何本お求めですか?」

雨宮由衣は花びらを優しく撫でながら、少し考えて言った。「99本でお願いします」

「かしこまりました。すぐに包装させていただきます!」店員は素早く動き始めながら、時々こっそりと向かいの男性を見上げた。

なんてこと!この人、本当に綺麗!テレビに出てる芸能人よりも綺麗じゃない!

どんな女の子が運が良いんだろう、こんなにイケメンな人から赤いバラを、しかも99本も贈られるなんて!

店員の好奇心は一気に燃え上がった!

「このバラは今朝空輸で入荷したばかりの新鮮なものです。お持ち帰り後も長持ちします……この包装紙はいかがでしょうか?最近このアンティーク調の包装紙が流行っているんです!よろしければ、これでお包みしましょうか?」

「はい、とても素敵ですね」男性は頷いた。