第215話 愚かな人類!

愚かな人間め!

まさか愚かな石獅子のようにここで愚かな女を待たせ、その高貴な首に愚かな凡物を付けるとは!

雨宮由衣は白の「愚かな人間め」という傲慢な表情が大好きで、スマートフォンを取り出して写真を撮り続け、数え切れないほどの自撮りをしても、まだ物足りなさそうだった。

傍らの井上和馬は、雨宮由衣がスルートの周りを恐れ知らずに回っているのを見て、額に冷や汗が流れそうになった。

この雨宮由衣は一体何を間違って食べたのか、以前はスルートを死ぬほど怖がっていたのに。

幸い雨宮由衣にはまだ分別があり、周りを見るだけで触ろうとはしなかった。もしこの御方を傷つけでもしたら、世界が大混乱に陥るだろう。

実は雨宮由衣は触りたくて仕方なかったが、スルートが人間の接触を極端に嫌うことを知っていたので、無理強いはせず、ふわふわした頭と大きな肉球を羨ましそうに眺めるだけだった。

いつか白が触らせてくれたらどんなに素敵だろう……

「井上執事?私の野菜はどうなってる?」

「お嬢様、ご安心ください。専任の者が適切に管理しております」

「早く見に行きましょう!」雨宮由衣は興奮して催促し、白虎に向かって言った。「白、白、私が育てた白菜を見に行かない?」

井上和馬は口角を引きつらせながら、「白…いえ、スルート様はそういうものにご興味はないかと」

肉食獣なんですから!

やばい、雨宮由衣に影響されて、自分までスルートを白と呼んでしまった!

雨宮由衣は残念そうな顔をして、「うーん、そっか!じゃあ白、私は菜園を見てくるね。後でまた遊びに来るからね!」

雨宮由衣はカバンを置くと、急いで裏庭へと走っていった。

確かに、彼女が出発前に植えた花や果物、野菜は全てとても良く手入れされていた。果樹は芽を出し始め、ひまわりも半分ほどの高さまで成長し、生育の早い野菜の中には収穫できそうなものもあった。池の魚も元気に泳ぎ回り、遠くには黄色い雛鶏が餌を探していた……

かつては金の檻のように冷たく恐ろしかった屋敷が、今や夕陽の中で至る所に優しさと親しみやすさを漂わせていた。

雨宮由衣は自分の成果を嬉しそうに見て回り、一方の執事は後ろで静かに血を流していた。世界最高峰の建築家が天価で建てた錦園が、こうして農園になってしまうとは……