第231章 国をも敵にできる富

二宮家秀は眉間に深い皺を寄せ、「詩音、叔母さんにそんな口の利き方をしてはいけません!敏江、あなたも黙っていなさい!」

「だって本当のことじゃない、私、間違ったこと言ってないのに、パパ、どうして私を怒るの……」叱られた二宮詩音は信じられない様子で目に涙を浮かべ、泣きながら走り去った。

二宮家秀は結局、普段から一番可愛がっている娘を厳しく責めることができず、姉に向かって諦めたように言った。「姉さん、私にできることは全部やってきました。大家族を養っていくのは私一人なんです。プレッシャーも相当なものです。これ以上の援助は無理です……」

雨宮由衣は茂みの陰に隠れ、この一部始終を目の当たりにして、怒りで体が震えた。胸の中で激しい憤りが渦巻いていた。

いいわ!二宮家秀!北条敏江!

あの頃、両親があれほど一家を助けてあげて、夫婦で二宮詩音を実の娘のように可愛がってあげたのに。二宮家秀のあの零細企業の資金も人脈も全て父が提供したもので、今住んでいる家だって元々は父の所有物だった。二宮家の全ては両親が与えてくれたものなのに。

今、父が失脚したとたん、この一家はこんな仕打ちをするなんて。

二宮家秀は自分の妻と娘が母を面と向かって侮辱しているのを見ても、一言も言わない。

中庭で、二宮家秀一家が家に入った後、母はただ一人、その場に取り残された。

母の性格を知っている。雨宮家で受けたこの屈辱を、きっと一人で胸に秘めて、誰にも話さないだろう。

今の経済状態では、外で暮らすのは更に負担が重くなる。だから母は耐え続けるしかない。

雨宮由衣は木の陰で手のひらを強く握りしめながら、母が暫く呆然と立ち尽くした後、ゆっくりと腰を屈め、洗濯物を一枚一枚干し始める様子を見つめていた……

母の痩せた静かな後ろ姿を見ていると、すぐにでも駆け寄りたい衝動に駆られた……

でも、今行ったところで、何ができる?

母に許しを請い、泣きながら今の自分の惨めな境遇を知らせ、更なる心配をかけるだけ。それ以外に何もできない!

必ず早急に両親を引き取ってあげる!二度とこんな屈辱を味わわせない!

以前、黒田悦男の前でプライドを保とうとして、父が残してくれた金を全て無駄遣いし、見栄を張るための物を買ってしまった。

今、お金が必要。たくさんのお金が必要!