第260章 男は金持ちになると悪くなる

会社のビルを出ると、雨宮由衣のクールでイケイケな態度は、まるで空気の抜けた風船のように萎んでしまった。

「ねぇ、お願い。ちょっと相談があるんだけど」由衣は探るように切り出した。

庄司輝弥は長い指で抱えている露に濡れた赤い花びらに触れながら、「何の相談?」と尋ねた。

由衣は弱々しく口を開いた。「相談というのは...私たち...また今度にしない?」

案の定、庄司輝弥の表情は一瞬にして冷たくなった。

由衣は慌てて説明を始めた。「ドタキャンするつもりじゃないの!本当は素敵なキャンドルディナーに誘おうと思ってたんだけど、さっき気づいたの。この花束を買うのに最後の貯金を使っちゃって...」

ああ、見栄を張るとろくなことにならないわね!

最後のお金でこの花束を買ったと聞いて、庄司輝弥の表情がやっと和らいだようだった。