第261章 私的裁判所

事件が起きてから、橋本羽の精神状態は悪化の一途を辿り、自分の体調を心配せずにはいられなかった。

この事件は彼のキャリアと人生だけでなく、精神世界全体にも影響を及ぼしていた。

善意から子供たちを助けようとしただけなのに、逆に誹謗中傷され、まったくしていないことで、一生涯この恐ろしい汚名を背負わなければならない。

そして、あの貪欲な夫婦は、彼の血肉を食い物にしながら、社会全体の同情を得て、将来は巨額の賠償金で贅沢な暮らしを送ることになるのだ。

もし今日、雨宮白という若い男性が現れていなければ、会社は羽に示談金での和解を強要していただろう。そうなれば、羽がこれ以上耐えられたかどうか、想像もつかない。

橋本羽が黙っているのを見て、桧山春樹は再び慰めの言葉を掛けた。「あまり悲観的になるなよ。渡辺部長も、もう一度チャンスをくれることに同意したじゃないか?もしかしたら、本当に転機があるかもしれない。雨宮白が何か策を持っていなければ、会議であんな大きな約束はしなかったはずだ...」

桧山春樹は考えたくなかった。もし雨宮白が失敗したら...

さらに最悪の場合...もしあの男に悪意があったとしたら...

「雨宮白」という名前を聞いて、橋本羽の瞳がわずかに動き、目の前に温かな笑顔が幻のように浮かんだ。

一瞬の茫然の後、彼はゆっくりと目を閉じ、瞳の奥に渦巻く底なしの闇を遮断した。

二日後。

三上夫妻とすべてのメディアが連携した「糾弾大会」が予定通り開催され、全過程がライブ配信された。

すでに訴訟を起こしているのに、開廷前にわざわざこのような記者会見を開くのは、私的な裁判と何が違うのだろうか?

橋本羽の精神状態への影響を避けるため、桧山春樹は事前に家のテレビ線とネット回線を切断し、橋本羽の携帯電話も没収していた。

他に見落としがないか考えていた時、橋本羽のプライベート携帯が突然鳴り出した。

着信表示:雨宮白。

その名前を見て、桧山春樹は急いで電話に出た。慎重な様子で「もしもし、雨宮さん?」

「ライブ配信を開いてください」電話の向こうの人は挨拶もせずに直接言った。

桧山春樹は驚いて「今ですか?」と聞いた。

雨宮白:「はい」

桧山春樹は少し躊躇してから「分かりました」と答えた。