事件が起きてから、橋本羽の精神状態は悪化の一途を辿り、自分の体調を心配せずにはいられなかった。
この事件は彼のキャリアと人生だけでなく、精神世界全体にも影響を及ぼしていた。
善意から子供たちを助けようとしただけなのに、逆に誹謗中傷され、まったくしていないことで、一生涯この恐ろしい汚名を背負わなければならない。
そして、あの貪欲な夫婦は、彼の血肉を食い物にしながら、社会全体の同情を得て、将来は巨額の賠償金で贅沢な暮らしを送ることになるのだ。
もし今日、雨宮白という若い男性が現れていなければ、会社は羽に示談金での和解を強要していただろう。そうなれば、羽がこれ以上耐えられたかどうか、想像もつかない。
橋本羽が黙っているのを見て、桧山春樹は再び慰めの言葉を掛けた。「あまり悲観的になるなよ。渡辺部長も、もう一度チャンスをくれることに同意したじゃないか?もしかしたら、本当に転機があるかもしれない。雨宮白が何か策を持っていなければ、会議であんな大きな約束はしなかったはずだ...」