第262章 それは彼だ……

傍にいる里村桜は髪が少し油っぽく、古びた灰色のスカートを着て、おどおどとした様子で、ずっと俯いて涙を拭っていた。「まさか橋本羽がそんな人だとは思いもしませんでした。私は自分の手で娘をそんな人渣の手に渡してしまったなんて……」

二人とも最も質素な底辺層の人々で、貧しく苦しい生活を送り、このような打撃を受けた。カメラの前に現れた途端、多くの視聴者が彼らの境遇に同情のコメントを連投し、さらに多くは橋本羽への罵倒の言葉だった。

アパートの中で、桧山春樹は夫婦が厚かましくも可哀想な振りをしているのを見て、怒りで爆発しそうになった。まして橋本羽本人がこの場面を見た時の気持ちは想像もつかない。

「羽、大丈夫か……」桧山春樹は心配そうに尋ねた。

橋本羽は黙ってスクリーンの二人を見つめ、何かに気付いたように目つきが少し変わった。「あいつか……」

「誰?」桧山春樹は困惑し、橋本羽の視線の先を追った。

そして、メディア席で見覚えのある姿を見つけた。週刊誌マーズの記者の隣に座っている男性は、雨宮白ではないか?

彼も来ているのか?

この雨宮白は、一体何をするつもりなんだ……

このような世論が一方的な状況では、状況を覆すことは不可能だ。もし彼が今日このような場で橋本羽の潔白を証明しようとするなら、橋本羽をより一層窮地に追い込むことになるだけだ。

桧山春樹は眉をひそめ、深い不安に陥った……

生中継の映像では、最初に発言したのは以前橋本羽に殴られたことのある東南新聞の背の高い痩せた記者、古館成己だった。

今回の事件での多くのいわゆる大スクープは東南新聞によるもので、彼らは今回の記者会見の発起人であり主催者でもあった。

この話題性を利用して、東南新聞は業界で名声と利益の両方を得て、さらに業界の良心とまで賞賛された。

質問の前に、古館成己はスライドを使って事件の全容を説明した。「この橋本羽が複数の少女と一室にいて、同じベッドに横たわっている写真は、皆さんもすでにご覧になったことでしょう。

私がこの写真を持って正当な取材をしただけなのに、橋本羽は私に暴力を振るってきました。芸能人として、このような品性では、私は彼が精神的な問題の他に、暴力的な傾向も持っているのではないかと疑わざるを得ません……」

「そうですよね!どんな理由があっても人を殴るなんて!」