第279章 私は彼が欲しい

等々力辰……

代表作『ビックリドラゴン1』。

等々力辰という名前に、雨宮由衣は少し印象があった。武侠ドラマが大好きだったので、当然名作武侠ドラマ『ビックリドラゴン1』を見ていた。

彼女の記憶が正しければ、この等々力辰は3年前にデビューし、『ビックリドラゴン1』で悪役のボスを演じ、一夜にして大ブレイクした。

このような高いスタートを切り、抜群のルックスを持っていたので、順風満帆のはずだったが、その後なぜか音沙汰がなくなった。

等々力辰の履歴書に記された芸歴は寂しいほど簡素で、『ビックリドラゴン1』というたった一つの誇れる作品以外、業界入りして3年、エキストラの役すら一度もなかった。

この履歴書で唯一輝いているのは、彼の写真だけだった。

写真の中、夕陽に染まるグラウンドで、少年は白いTシャツとジーンズを着て手すりに腰掛け、風に向かって眺めている。完璧な横顔、柔らかな髪が風に少し乱れ、澄み切った瞳には若々しい活力が満ちていた……