雨宮由衣は橋本羽が突然自分の寮の部屋の前に現れ、大小の荷物を手に提げているのを見て、しばらく呆然としていた後、やっと我に返って驚きながら尋ねた。「これは……」
「春樹兄から君が隣に引っ越してきたと聞いたから、挨拶に来たんだ」橋本羽は礼儀正しく答えた。
雨宮由衣はその言葉を聞いて、驚いて隣の方向を見た。「ここに住んでいるの?」
橋本羽は少し困ったような表情で答えた。「元々は東区の方の別荘に住んでいたんだけど、君も知っての通り、最近の件で私の個人住所が全部流出してしまって、だから一時的にこちらに戻ってきたんだ……」
雨宮由衣はやっと理解した。「なるほど」
雨宮由衣は思わず橋本羽をもう一度見つめた。彼は今日、ジーンズに黒いレザージャケット、中に柄物のシャツを着て、白いスニーカーを履いていた。左耳には矢羽根型の特徴的な銀のピアス、やや茶色がかった短髪は少し乱れていた。
とてもカジュアルな装いで、爽やかでかっこよく、優れた容姿とカメラの前での長年の経験から醸し出される雰囲気のおかげで、どこに立っていてもポスターのような存在感を放っていた。
しかし、最も人の目を引くのは、その輝く瞳だった。まるで二つの炎が躍っているかのように明るく生き生きとしていた。
ユニバーサルの会議室で見た時の憔悴して暗い様子と比べると、今の橋本羽の状態は格段に良くなっていた。
彼女の記憶の中の橋本羽は、ファンを興奮させる一方で、年配の先輩に90度の礼をして支えることもできる人だった。真っ赤なフェラーリで街を走り回りながら、路傍で野良猫に餌をやることもある……
一見自由奔放に見えて、優しく柔らかな心を持っている。
風のように自由で、頭上の太陽のように眩しく、いつでも周りの人々を彼の情熱と優しさで感化している。
これこそが本当の橋本羽だった。
前世で彼女が橋本羽というアーティストを好きになったのも、彼が持つこの熱烈で自由な生命力に心を動かされたからだった。
あまりにも素晴らしかったからこそ、前世での彼の転落は人々に非常な惜しみを感じさせた。
でも良かった、今世では、この輝く星は依然として光り続けている……
橋本羽は彼女の潤んだ瞳に見つめられ、なぜか胸が締め付けられるような感覚を覚え、軽く咳払いをして言った。「邪魔じゃなければいいんだけど……」