一秒が過ぎ、二秒が過ぎ、三秒が過ぎた……
庄司輝弥は冷たい目で橋本羽の姿を一瞬見つめ、そして、無表情で口を開いた。「こんにちは」
橋本羽は軽く頷いた。「こんにちは!」
男の威圧感が強すぎて、彼を見る目つきは、なぜか背筋が凍るような錯覚を与えた……
橋本羽は雨宮由衣を見て、探るように尋ねた。「あなたのお友達は……業界の人ですか?」
庄司輝弥が意外にも怒らなかったのを見て、雨宮由衣はようやく安堵の息をつき、答えた。「いいえ、彼は業界外の人で、ビジネスマンよ」
橋本羽は納得したように頷いた。
もし業界の人間なら、このような神がかった容姿で、とっくに大ブレイクしているはずだ。見たことがないはずがない。
雨宮由衣は橋本羽に声をかけた。「どうぞ座って。今日引っ越してきたばかりで、まだ何も整理できてないから散らかってるけど。何か飲む?私のところ、白湯しかないかも。お茶があるか探してみるけど……」
橋本羽は急いで言った。「気にしないでください。白湯で大丈夫です。前回は本当にお世話になりました。まだちゃんとお礼を言えていなくて。今夜お食事でもご馳走しようと思っていたんですが、今日はお客様がいらっしゃるようで……」
雨宮由衣は彼にコップの水を注ぎながら、「橋本さん、気にしないでください。前にも言ったように、私に感謝する必要はないんです」
「分かっています。でも渡辺部長は渡辺部長、私は私です。今回もしあなたがいなければ……私がどうなっていたか、よく分かっています……」
橋本羽は瞳の奥に残る暗い影を隠し、向かいの青年を見る時、目線は柔らかくなり、笑いながら言った。「ずっとどうやってお礼をすればいいか考えていたんですが、なかなか適切な方法が見つからなくて。唐突かもしれませんが……彼女を紹介させていただけませんか?」
雨宮由衣はその言葉を聞いて、危うくコップを落としそうになり、ソファに座っている某人を慌てて見やり、すぐに断った。「あ、あの、結構です。私、もう彼女がいるんです!」
しかも当の本人がここにいるというのに!
橋本羽は心の中で考えた。彼女がいる?もしかしてあの夜、電話で聞こえた女性か?
「そうですか……分かりました。では、都合の良い時に改めて約束させてください。このお食事は必ずさせていただきたいんです!」橋本羽の態度は断固としていた。