第328章 恩義は尽きた

「詩音、挨拶しなさい!」北条敏江は笑みを浮かべながら娘の二宮詩音を見つめた。

「荒井おじさん、こんにちは」二宮詩音は荒井明邦に向かって笑顔で挨拶した。

「いい子だね!」荒井明邦は親しげに笑いながら言った。「詩音ちゃんは本当に綺麗になったね」

その言葉を聞いて、北条敏江は得意げな表情を浮かべた。自分の娘が綺麗でないはずがない。

北条敏江が何か言おうとした矢先、彼女の視線が前に立つ雨宮昇平に向けられ、途端に笑顔が消え、眉をひそめて言った。「義兄さん、どうしてこんなに早く来たの?」

雨宮昇平は北条敏江を見て答えた。「今日は父の誕生日会だから、渋滞を心配して少し早めに来ました」

その言葉を聞いて、北条敏江の表情は一気に曇った。彼女は眉をひそめ、雨宮昇平を上から下まで見渡しながら、不機嫌な口調で言った。「義兄さん、早く来たって、会社の仕事はどうするの?今日は新しい商品が入荷したばかりで、後で倉庫に入れないといけないのに、一言も言わずに来るなんて。もし何か問題が起きたらどうするの?」